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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
大商人街道編
439/502

グリーンノウズの新年

教会には基本的に休日はない。

年末年始だろうとヒトは亡くなり、揉め事の仲裁などの雑用から、年始行事のような儀式まで、常に仕事があるのだから。

西方大教会の長である、枢機卿ジョルジアット・フランシスコも例外ではない。

特に重要な式典は、枢機卿なしでは始まらない。


「では、行ってくるよ」


と、午後から出掛ける先は、西方大教会本部。

今日は大晦日、大鐘楼の打鐘行事がある。

レリットランス程寒くなくとも、気温は十度。

十分に冷える風の中、迎えに来た教会馬車に揺られて五分程。


「さて、本日の打鐘、担当者は準備出来ているか?」

「日没時間は概ね、午後五時」

「それが打鐘の開始時刻」

「今年は五百三十七年だから、五回打鐘、一分休み、三回打鐘、一分休み、七回打鐘」

「年末の打鐘は、この回数」

「翌日の新年の打鐘は、午前六時五十分」

「勿論、来年の五百三十八年を示す、五回、三回、八回」

「私は執務室で両方の鐘が終わるまで待機する」

「様々な判断は現場に任せるが、指示が必要な時は遠慮なく来るように」


粛清の嵐で、二割程減った教会職員。

新年度の採用は、それを上回る数を採用する予定だ。

今の現状、多少の人手不足はあるが、それでも業務に支障はない。

残業が増えても、それに伴って手当が支給されるのだから、職員に不満はない。

それでも、フランコが手本とならねば、すぐに風紀は乱れるだろう。


「勤務交代の時間になったら、皆、食堂に行くといい」

「年末の特別食が用意してある」

「家族を待たせている者は、持ち帰っても構わないぞ」

「夜勤の者は、申し訳ないが休憩の際にでも食べてくれ」

「勤務が終わるまでは酒は我慢」

「清く、正しく、美しく、だよ」


職員の返事と拍手を背に、フランコは執務室に入る。

今年、遣り残したことは残念ながら少なくない。

特に魔道動力キャラバンについては、その下地作りも終わっていない。


だが、やり遂げたことも多い。

一番の収穫は、治安回復への第一歩を踏み出したこと。

アレクサンドルの排除と教皇とのコネクション。

レリットランスとの同盟とシャアリィとアイシャの助力。

治安対策委員会の設置。

領主府との連携。

セブール商会の弱体化。


多分、この仕事に終わりなどない。

来年は、少しばかり駒を先に進めよう。


フランコの年越しは、一人きりの執務室。

それでも、今までで一番充実した年越しだと自身は感じていた。


・・・


「フランコの戻りって何時だっけ?」


と、アイシャがシャアリィに聞けば、


「明日の日の出の打鐘が終わってからだって言ってた」

「多分、帰ってきたらバタンキューだから、夜、何か作り置きしよう」


ソファで寛ぐ二人。


「二人だけだとお菓子とか、適当に食べればいいから楽だよね」

「でも、居候の身だから、食事ぐらいはちゃんと作らないと」

「あれ、むしろ協力しているんだから、もっと贅沢しても?」


笑いながら、きままな年越し。


「今年もいろいろあったねぇ」

「そう言えば、私達の家、来年二月末には完成らしいよ?」

「商業ギルドに伝言があった」


アイシャが思い出して、シャアリィに報告する。


「アイシャの二十才の誕生日と同じ時期かぁ」


そこでアイシャは気付く。


「シャアリィの誕生祝い・・・してなかったね・・・ごめん」


シャアリィは、全く気にしていない。


「じゃあ、全部一緒にやればいいよ」

「ついでにエレナ達にもう一度結婚式みたいなのやってもらったり、ナッチェのお祝いしたり」

「そういや、アレックス夫妻とか、フランコの誕生日って何時なんだろうね?」

「今度、聞いてみよう」


年中お祝いになりそうだ、と、二人は笑った。


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