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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
大商人街道編
438/501

フランコ邸の年末

生活魔具と、魔石家具の違いは素人には余りよくわからない。

中身は何から何まで違うのかもしれないが、一言で言えば効率が違う。

そして、魔力が使えなければ魔石家具は使えない。

魔石からのエネルギーのオンオフの切り替えしか出来ないのも、魔石家具の不利な所だ。

だから、冷蔵庫や冷凍庫、冬の暖炉で火の魔石を使う程度であれば問題ないのだが、生活魔具は魔力も必要なく、エネルギーの調整も出来る。


・・・


今日、シャアリィが買い込んできたのは、『うなぎ炙りセット』だ。

年越しの買い物で込み合う年末の商店で、少しばかり高値となっている商品の数々。

どうせ何処にも出掛けないだろうと決め込んで、連日、大量の食材と酒を買い込んだ。

最早、冷蔵庫も、冷凍庫も悲鳴が聞こえてくる程に詰め込まれている。


「フランコは実家に戻らないの?」


と、シャアリィが興味深いことを尋ねると、フランコは素気ない返事。


「ああ、うちは家族仲があまり良くなくてね」

「実家は、ここからでも見えるよ」

「帰る気はまったくないけれどね」


アイシャも同じようなものなので、フランコの気持ちはわからなくもない。

家督がどうの、跡取りがどうの、年寄たちの話は何処でも同じ。

そして、ずっと子供扱い。

帰っても面白いことはない。

そう考えればジョンソンという男は随分と優しいのだろう。


小高い丘の上の大邸宅・・・それがフランシスコ家。

この時世に貴族でもないのに使用人までいる、と、ジョンソンから聞いた。

だから、『坊ちゃん』なのである。


シャアリィは幼い頃に両親を亡くしているが、他人の家庭の事情には口を挟まない。

何度か寂しいと思ったことはあるが、もっと切実な問題が常にあった。

空腹、貧困、無力。

孤児となり、それに慣れてしまえば、寂しさなどどうでもいい。

寂しさではひとは死なないが、空腹、貧困、無力は命を奪う。

だから、様々なことに鈍感になるのも仕方のないこと。

三人は、それぞれ育ちは違うけれど、こうして気があうのは不思議なものだ。


「今日は久々のうなぎなのさ」

「なんと、捌き方を教えてもらいました」

「これでいつでも作れます!」


自慢げにシャアリィが小さめの包丁と、捌いたうなぎを見せる。


「それは凄いな」

「じゃあ、うなぎスレイヤー殿、宜しく頼むよ」


フランコの冗談に、アイシャが噴き出す。


「うなぎスレイヤーって、どうなの」

「私からは『うな斬りシャアリィ』の二つ名をあげるよ」


シャアリィはまんざらでもなさそうに、


「二つ名は幾つあってもいいね」

「てゆか、アイシャはライス炊いて、フランコは、えーと、応援でいいや」


フランコはライスワインを片手に、賛美歌を歌う。

その歌声は妙に心地良く、シャアリィとアイシャの耳朶をくすぐった。

知らぬまにシャアリィもアイシャも鼻歌を口ずさむ。


今頃、遠いレリットランスの街でも、皆、ファイヤー亭に集まって宴をしているだろうか。

そんなことを考える程に、シャアリィとアイシャは、レリットランスという街が好きだ。


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