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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
大商人街道編
437/489

希望がなくちゃね?

十月。

粛清リストの約半数が一ヶ月程で片付いたものの、治安がどれだけ良くなったかと言えば、目に見えてはわからない。

軽微な犯罪は横行し、未だに殺人も起きている。

まるで骸に群がる蛆のように、グリーンノウズの悪人たちは次から次へと湧いてくる。


アイシャは一つの答えを見つける。

それは都市特有の無関心。

犯罪の数に対して、通報の数があまりにも少ない。

誰もが見て見ぬふりを決め込んでいるのだ。


それはこの土地の自営手段なのだろう。

皆が損得勘定の上でしか生きられない。


徒労・・・そんなことが頭に過る。

自分でさえ心が擦り減っているのだから、改革の中心にいるフランコは恐らく相当だろう。

この状況を打破するには、大きな原動力が必要だ。


「希望がなくちゃね?」


と、シャアリィが言う。

グリーンノウズの街の人々に希望を与えるものとは、何だろうか?


「歌劇場を作ろう!」

「そして、子供たちを招待するんだ」

「冒険の物語がいい」


それはただの思い付き。

そんなことで変わるならば苦労はしないとフランコは言うだろう。

それでも何故か、アイシャの心には響いた。


「希望を私達が示そう」

「ドラゴン・スレイヤーの物語だ」


・・・


たった二週間の突貫工事、屋根さえなく、そこにあるのは客席と舞台だけ。

それでも娯楽に飢えた人々が列を為して押し寄せた。

観覧料はひとり銅貨二十枚。

役者の給料が出せる最低限の収入。

安息日だけの公演。


劇の出来はお世辞にも良いとは言えなかったが、それでも、子供たちからは歓声が上がった。

これから一ヶ月毎に物語が追加されてゆく。

雨の日だけは残念ながら公演中止。


興味深いことは、犯罪抑制に兆しが見え始めたことだ。

親子の時間、近所との付き合いが増え、コミュニティが形成された成果だろう。

悪いことは恥ずかしいこと、子供がそう口にすれば大人は手本になる。

無関心だったことにも、自然と目が行き届き、軽犯罪は激減した。

無償で公演の手伝いをしてくれる支援者も増えた。


「まるで魔法のようだ」


と、フランコは言う。

シャアリィとアイシャは答える。


「そうだよ、私達の術式さ」

「希望という名の魔法」

「清く、正しく、美しくなんだろう?」


怒涛のように過ぎる日々、もうすぐ今年も終わりを告げる。

心残りはエレナの結婚式も、ナッチェの成人式も見逃してしまったこと。

時折来る手紙には、何時も、


『元気でいて下さい』の文字。


少しばかりのせつなさ。

フランコ、シャアリィ、アイシャは、久しぶりの纏まった休暇を宴で埋め、忙殺された数か月を振り返った。


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