改革の道程
そもそもの話。
何故、シャアリィとアイシャがフランコの掃除を手伝っているかと言えば、当然、レリットランスまで魔道動力キャラバンを開通させる為である。
それに不可欠なこと、
その一、グリーンノウズの陸上輸出拠点の確保
その二、グリーンノウズの海上輸入拠点の確保
その三、それに関係する諸々の準備
つまり、最優先事項は、輸出入拠点の確保のために、その障害を取り除くこと。
それはグリーンノウズの治安回復と一石二鳥。
治安をある程度回復させなければ、グリーンノウズは従来以上の利権の巣窟となり、面倒は増えるばかりなのだ。
容赦のないフランコの手際を支えているのは、『粛清リスト』。
少なくともファイルに記載されている人物全員を、何らかの形で粛清。
そこに荒事が入れば、シャアリィとアイシャの出番である。
・・・
今日の粛清メニューは、寄付の過小申告をしている教会責任者たち。
残念なことは、アレクサンドルと関わりのあった人物しかわからないことだ。
私腹を肥やすためだけに動いている子悪党は、『粛清リスト』には記載されていない。
それは今後の配置転換などで対処するしかない。
リストに記載されている者が次々と枢機卿執務室に呼ばれる。
最近ではフランコの執務室は『処刑台』などと、呼ばれている。
事実、そうなのだから、フランコは知らぬふり。
意外に思うかもしれないが、教会は給与制だ。
寄付は全て一度大教会会計局に集められた上で、配分される。
その給与は平均的な商店の従業員と同程度。
勿論、階級があがれば、それに応じて給与も上がる。
修道士ならば、月収で金貨二枚と銀貨五十枚程度、司祭からはある程度の経費が使えるようになり、月収は金貨五枚に倍増する。
司教になれば更に倍増で金貨十枚、大司教で金貨二十枚、枢機卿に至れば月収で金貨五十枚。
但し、寄付を集められなければ、強制的に労働が与えられたり、時には位階の格下げもある。
そのシステム自体が、賄賂や癒着の子宮なのだ。
つまりは寄付に頼らない教会独自の収益も、グリーンノウズの教会には必要だということ。
そうしなければ、金銭の絡む不正の撲滅は出来ない。
『農場を経営しよう』
勿論、民間農業を圧迫してはならない為、生産品は限られる。
現状、輸入に頼っている作物がいい。
そうなれば、必然、小麦、米といった穀物類だ。
そして・・・
『新規入植者特別区域の設立』
今更、無理矢理に旧市街区の人々の生活を変えるのは残酷だ。
それでも時代は変わる。
だから、彼らの住む地域は歴史景観特別区域に指定すればいい。
変わりたければ、無理矢理でなく魅力で惹きつけよう。
そうすれば自然に人口は流動し、経済格差は是正される。
新新都心計画だ。
それには領主の協力が必須だが・・・
今、すぐに取り掛かるには資金が足りない。
魔道動力キャラバンが生み出す収益が必要だ。
フランコが考えるグリーンノウズ改革は長く険しい。
・・・
「ふぅ、真面目な枢機卿ってのは疲れるな」
そう零すフランコの酒の量は増える所か、減っている。
毎日を忙殺されれば、酒を飲む時間がない。
それでも健康的な食事と休息があれば、精神も肉体も維持される。
アイシャが笑う。
「そりゃそうさ、労働は尊いんだ」
「私達のような小娘だって、努力無くして強くなったわけじゃないよ?」
「言わなくてもわかるでしょ?」
フランコは頷きながら、
「そうだな」
「皆、きみ達のことを才能に恵まれたお嬢さんのように見ているけれど、きみ達がどれだけ地道に積み重ねたか、どんな危険に踏み込んできたのか、私は見てきた」
「そんなきみ達が協力してくれてるんだから有難いよ」
シャアリィは照れながら、
「それしかなかっただけの不器用者なんだけどね」
「フランコも随分、不器用だけどさ」
フランコは、言われて気付く。
ああ、自分は器用ではなく、不器用だったのだ、と。
群れに馴染めない自分の不器用さを、今ならば少しばかり理解出来る。
不器用なのも、悪くない、と。




