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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
大商人街道編
432/466

許されざる巨悪

「私の元上司である、先代枢機卿クリムゾン・アレクサンドルは、複数、否、膨大な数の犯罪に関わっており、それを理由に粛清されました」

「このファイルは、その詳細が記録されたものです」


一冊の白いファイルを手に持ち、フランコが淡々と話す。


「今回の被告であるビル・ジョビンスに関する記載、強盗で四件、殺人は十七件、傷害は百二十二件、贈収賄七十五件、誘拐六件、人身売買三件、禁制品取引二十四件、その他十三件」

「中には時効となったものもありますが、これは巨悪と言って差し支えない」

「複写も用意しましたので、裁判官、立件士、弁護人は参照願います」

「書面は機密文書指定、拝読後は回収させて頂きます」


どよめく法廷。

裁判官が二回強く、ガベルを打ち鳴らす。


「静粛に」

「続いて追加証人、冒険者アイシャ・セロニアス」


その容姿の清廉さに傍聴人は息を飲む。


「私はグリーンノウズ冒険者ギルドで、あるクエストを受注しました」

「ですが、あまりに怪しい内容であったために、それを断りました」

「その内容とは、セブール商会所有の船舶が盗まれたので、盗んだ海賊を殲滅せよ、と、いうものです」

「衛兵監督所に被害届は出されておらず、準備として提示された『殺人許可証』なる書面の存在も確認できなかった為、断るに至ったのです」

「賞金首でないものを殺害せよ、それも、状況を錯誤させた上ならば、極めて重大な犯罪行為」

「それを私は、このビル・ジョビンス本人から受けたのです」

「ちなみにクエスト報酬は破格の金貨三百枚であったことを付け加えます」


ジョビンスは慌てて、弁護人に耳打ちする。


「全て出鱈目で、記憶にない」

「被告人は、そう申しております」


やはりな、という顔でフランコは溜息を吐く。

そして、挙手し、裁判官がフランコを指名。


「では、このファイルの記述者を明かしましょう」

「現教皇、ショット・ワイズリート様です」

「裏表紙に押された教皇印、直筆のサイン、紛れもなく教皇様本人のもの」

「それを出鱈目だと言うならば、教皇侮辱罪で執行権限の委譲を教会は要求します」


王手決着(チェックメイト)


「待ってくれ!違う、認める!」

「司法取引を要求する!」


悲鳴のように叫ぶビル・ジョビンスの言葉は、通用しない。

裁判官は、判決を述べた。


「被告ビル・ジョビンスの執行権限は西方大教会に移譲される」

「よって司法取引は却下」

「これにて、閉廷」


無常に打ち鳴らされるガベルの音。

崩れ落ち泣き叫ぶ哀れな男が衛兵に拘束され、法廷の外に連れ出される。

それを見届けた後、シャアリィが残された弁護人に語り掛ける。


「弁護人は、自分の弁護も出来るらしいね?」

「金のために嘘八百並べたんだから、次はあなたの番かもよ?」

「震えて眠るといい」


呆然と立ち尽くすモノクルの男は、我に返ると渡されたファイルの複写に自分の名前がないか、血眼になって探す。

そして、ジョビンスと同じように、崩れ落ちた。


床に散らばった紙をアイシャが丁寧に回収し、ぽつりと呟く。


「自業自得というだろう?」



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