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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
大商人街道編
431/433

粛清リスト

フランコの手元にあるのは、三冊の白いファイル。

それは『粛清リスト』。

アーシアンからの去り際に、ワイズリートから手渡された貴重な文書。

裏表紙には教皇印が押され、署名まである。


最初に手を付けるべきは、自分の足元、教会。

しかし、それに先んじてやることが出来てしまった。


三冊の白いファイル、そのうちの一冊の最上段に書かれた名前。

セブール商会主力船団支配人、ビル・ジョビンス。


その裁判が今日、行われることを掴んだ。

このままの状態で裁判に突入すれば、あらゆる方面に金をバラ撒いているセブール商会の幹部に厳罰を突き付けることは難しい。

裁判官、証人、被害者には金だけでなく脅しもしているだろう。

誰も口を割らない裁判では巨悪を又、野放しにしてしまう。

今でさえ、罪状から考えればあり得ない保釈申請が罷り通っているのだ。


午前十時。

フランコはシャアリィとアイシャを伴い、領主府の裁判所に向かう。


「教会として、証拠書類と意見陳述の許可を願います」


本来はお願いなど必要ない、が、フランコは裁判官とセブールの癒着も疑っている。

拒絶の素振りを見せたならば、裁判官も新たな調査対象だ。

幸いにして、フランコの申請はすぐに認められた。


「本日午後三時より、開廷しますので、お時間までに準備室においで下さい」


・・・


フランコは枢機卿になっても飄々としている。

赤い詰襟が気にいらない、と、普段は普通の聖衣を着ている。

ホットドッグスタンドで、少女二人とパンを齧っていても、誰も見向きもしない。


「そういやぁ、ワイズリート卿・・・否、教皇と酒宴の約束したんだっけ」

「近々、アーシアンに付き合ってくれないか?」


等と呑気にお喋り。

緊張感がないのは、シャアリィも同じ。


「いいね!リーシャも来るんでしょ?」

「今度は酒盛りで勝負だ!」


と、言えばアイシャが笑いながら、


「多分、勝てないと思うよ・・・私達は先祖譲りのアルコール耐性がある」


道理で何時も先に酔い潰れるわけだと、シャアリィは納得した。


・・・


午後三時数分前。

法廷に隣接する準備室で三人は待機する。

今回の出廷は飛び入り、セブールの弁護人にも、ジョビンスにも知らされてはいない。

顔触れを見れば、あの饅頭面は汗まみれになることだろう。


ガベルを打ち鳴らす音が三時を告げ、裁判官が出廷を促す。


「被告人ビル・ジョビンス」


手錠もなしに、弁護人を伴って、セブール商会主力船団支配人が出廷。

衛兵監督署の立件士が、容疑と求刑を読み上げる。


「被告は、強盗、殺人、傷害、贈収賄、誘拐、人身売買、禁制品取引、ありとあらゆる犯罪に教唆、幇助として関わり、治安を著しく乱した罪により死罪を求めるものとします」


極刑を求められても、ジョビンスは狼狽えない。


「弁護人から反論を」


そう言って立ち上がった男の目にはモノクル、神経質そうな痩せぎすの弁護人。


「端的に言えば、教唆、幇助の証拠は曖昧で確定したものはありません」

「状況証拠や利害関係人による証言の数々は、妄言であるとしか言いようがありません」


苛立つのは、勇気を振り絞って告発した数人の証言者と立件士。

教唆や幇助を認定するためには、それをジョビンスから請け負った証人が必要だ。

セブール側の関係者は悉く謎の失踪や不可解な自死を遂げている。

証拠隠滅には随分と自信があるらしい。


「追加の意見陳述と証拠が教会より示されました」

「陳述者、ジョルジアット・フランシスコ枢機卿、出廷」


その名前で空気が変わる。

ジョビンスは苦々しく、フランコを睨む。


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