超特大のハリケーン
アイリーンが気を利かせて、ギルドの扉を閉める。
その顔は興味津々。
「勿論、それは俺が一番欲しかったものだが、そんなことをして大丈夫か?」
「セブールの連中と戦争になるぞ」
「領主府だって黙っちゃいない」
「それに、あんたの足元からも火が上がるだろう?」
フランコは飄々とした顔のままで、平然と答える。
「それがどうした?」
「誰かが、いつか、やらなくちゃこの街は変わらない」
「まずは足元の火種を消してやるさ」
「アレクサンドルは、もういない」
「これから教会で出世するためのルールを教えてやる」
「自分で言うのもなんだが、清く、正しく、美しく、だ」
「人間が本来持っている美徳、それがこの街には必要だ」
アイシャは見事、と、手を叩く。
「その為の私達だ」
「汚れ仕事は引き受ける」
「慈善、偽善、勧善懲悪は痛快だぞ?」
シャアリィが笑う。
「時代は変わるんだよ」
「否、変えるんだ」
「その手伝いが出来るなら、やるしかないじゃない?」
ジョンソンは真剣な顔つきになる。
「ノリじゃなくて、本気、なんだな?」
「一歩踏み出せば後戻りは出来ない」
「もう一度聞く、本気か?」
三者三様、答えを示す。
「神に誓って」
「当然だ」
「楽しみだね」
そして、ジョンソンは見極める。
「馬鹿共め」
「俺が裏切るとは思わないのか?」
にやりと笑ってフランコが告げる。
「あんたは家族思いのいい奴だからな」
「裏切るなんて思ってたら、こんな話持ってこないよ」
「私の粛清劇を見た後でも、返事は構わない」
「必ず、首を縦に振らせるようにしてみせるさ」
それは夏の終わりに吹き荒れる嵐。
それも超特大のハリケーンだ。
だが、無差別の破壊ではない。
悪人だけを根絶やしにする粛清の竜巻だ。
ジョンソンは正しい判断を下す。
「いいぜ、乗った」
「俺はこういうのを待ってた気がする」
「自分という人間が信頼される日を」
アイリーンは、そっぽを向いたまま、誰にも気付かれないように泣いた。
それは家族のために自分の人生を後回しにした男が報われた涙。
シャアリィが目敏く、それを見つけて、
「コネっこ、泣いてるの?」
と、空気を読まず言えば、アイリーンは、
「泣いてねえし」
「コネでも、姪でも、どうでもいいし」
少しばかり素直になった。




