まずは掃除
その街は聖職者の巡礼地。
その迷宮はアンデッドの巣窟。
そこにある教会は、アーシアン連合国西地区の最高権威教会。
白い壁と青い海、緑風と熱砂、生者と死者。
伝説の魔人マーヴェリック・エルゴ・ダインの故郷。
新しい枢機卿としてグリーンノウズの地に戻ってきたフランコ。
帰宅と同時に届く、様々な貢ぎ物。
これは面倒だと頭を抱える。
シャアリィも、アイシャも、グリーンノウズ改革に手を貸すことになり、また、暫くフランコ邸での生活が始まる。
最初の仕事、それは『掃除』だ。
勿論、屋敷の掃除ではない。
今まで深く根差していた三竦みの関係を悉く破壊すること。
セブール商会、領主府、教会・・・これを正しい在り方に戻さなければならない。
つまり最初の仕事はセブール商会の裏稼業の駆逐。
自由経済にまで口を挟むつもりはないが、必要であればこの地からの排除も厭わない。
「あいつ、まだ、いるかな?」
シャアリィが、あいつと言えば『象』こと、ブラットン・ジョンソンのことだ。
アイシャはその言葉で、成程と納得する。
ジョンソン程、裏の世界を知る一般人はいない。
「フランコ、彼を領主府か、衛兵監督署に捻じ込めるか?」
アイシャはジョンソンを起用することに賛成のようだ。
それにはフランコも同意する。
「彼や家族の安全性を考えるなら、衛兵監督署だね」
「ただ、我々の思惑よりも先に、ジョンソンの意向を聞こうか?」
「お膳立てをした所で、彼がやりたい仕事かどうか」
「無理強いはしたくない」
今日は旅の疲れを癒し、本格稼働は明日から・・・。
そう決めて、ジョンソンの所に向かい前振りだけを話すことにした。
・・・
相変わらずの開け放たれた両開きの扉・・・グリーンノウズ冒険者ギルド。
カウンターにはネイルの出来栄えを眺めるアイリーン。
「よう、コネっこ」
「帰って来たぜ?」
シャアリィの声に驚くアイリーンが叫ぶ。
「マスター、キラーズが戻ってきたよー」
その声にすぐさま反応し、ドタバタと奥の扉から現れるギルド・マスター、ジョンソン。
「久しぶりだなキラーズ」
「ああ、今はドラゴン・スレイヤーか」
「おまけに結局、『廃棄の王』まで殺ったらしいじゃねえか」
「どんだけ稼げば気が済むんだよ」
「で、何の用だ?」
それに応じるのは、フランコ。
「きみをスカウトしようと思ってね?」
「この仕事辞めたがってただろう?」
「私の枢機卿就任祝いに、衛兵監督署のポストをプレゼントしようじゃないか」
あんぐりと口を開け、ジョンソンが固まる。
「まじか、坊ちゃん」
「枢機卿になったのは知ってたが、俺はあんたに貸しなんてないぜ?」
「どういう風の吹き回しだか、わからねえ」
「何を企んでいる?」
アイシャがフランコの前に出て、凛とした声で返す。
「この街を掃除するのさ」
ジョンソンはパシンと音を立てて、己の顔を右の掌で覆った。




