大商人への道
翌日、予定通りの待ち合わせ、フランコとシャアリィ、アイシャは職人ギルドに向かった。
「まずは、四頭立ての馬車から始めよう」
「で、ゆくゆくはエンダーベルトの動力機関を買い付けてアーシアン初の魔道動力キャラバンに仕上げる」
「船では既に実用化されているんだ」
「陸上に持ち込むだけなら、難しいことじゃない」
と、フランコは職人たちと会議を始めた。
今までのキャラバンとの違いは、まず、その大きさ。
重量物の輸送を考えれば耐久性が求められる。
必然、金属部品が多くなり車両は重くなる。
計算上では馬四頭で何とかなる重さだが、問題はもう一つ。
騎手。
二頭立ての馬車でさえ、道を曲がるには熟練の技術が必要なのだ。
それを四頭同時に操るのは至難。
そこで考えられたのが、二頭、二列の配置。
騎手は二名。
コンビネーションさえ練習すれば、従来の騎手でも操縦出来る。
職人という人種の発想は偉大。
次に向かう先は商業ギルド。
運行計画や、実際に物を売る商店の手配が必要だ。
現状のキャラバンの運行実態を把握し、無理のない運行計画を策定する。
実に地道な作業だが、これが杜撰だと収益性が損なわれキャラバンの維持が難しくなる。
従来のキャラバンは、商業ギルドが指定する枠を商人が買い付ける方式。
運行計画が決まれば、最初は領主府が主体となり商品を扱うことになる。
一度でも商品を見れば誰もが欲しがる品だが、商品を知らなければどうしようもない。
領主府が反対すれば、シャアリィとアイシャが商品を扱うことで落ち着いた。
午前の訪問が終わり、『黒猫のテラス』で一休み。
「商人という生き方もアリかもね?」
「しかも、生活魔具だよ?」
「普及するまでは荒稼ぎし放題じゃない?」
シャアリィの指がわしゃわしゃと動き、目が輝く。
「ああ、売れるだろうな」
「輸送さえなんとかなれば私だって揃えたい」
「現状、大型の生活魔具を購入するならば、船便のコンテナを手配しなくちゃならない」
「小型の商品なら持ち運びが出来るが、料理店や職人くらいしか需要がなかった」
「洗濯、掃除、湯沸かし、調理、冷房、暖房、冷凍、冷蔵、解凍」
「生活に革命を齎す商品だ」
「いずれはアーシアン中に普及する」
「その先行利益は莫大だね」
アイシャもご機嫌で話に乗る。
「今度は、最強の商人目指しちゃう?」
「こんな話は一生に一度だけだろうし!」
三人の顔はすっかり商人。
午後、領主府にてアネモイとの面会予約を取ろうとした所、珍しく時間が空いているらしく、すぐに会談が出来た。
「もう、そこまで話を進めてくれているのですね?」
「グリーンノウズの領主よりも先に私に話して良かったのかしら?」
アネモイは驚きと歓迎。
「ええ、この話の発端は私とアネモイ領主様です」
「汚い金を蹴散らすには、綺麗な金を流通させるのが手っ取り早い」
「最初の価格設定には、『贅沢品』として、税を大きく乗せることも可能でしょう」
「流通が増えれば、コストも下がります」
「大きな普及はそこからですが、領主府の投資は得られますか?」
フランコの言葉に、アネモイは珍しくにやりと笑い、
「お好きなだけ、出しましょう」
「但し、最初の一年だけは貸付という形で体裁を取りますが」
「このビジネスはアーシアン全土を幸福にします」
「ですが、法整備も必要です」
「商品を扱う際の重要な注意事項を周知しなければ、訴訟も起きますから」
「お金だけ出して丸投げのような恰好になってしまいますが、宜しくお願いします」
こうして、大事業が始まることになった。
――― 一つの時代が終わり、新しい時代へ。
生きているということは常に時代の先端にいるということ。
過去から学び未来を紡ぐ。
新たな魔石の需要が生まれれば、新たな戦いも待ち受ける。
これから始まる冒険は、もしかしたら魔物との争いよりも難しいかも知れない。
それでもシャアリィとアイシャの冒険は終わらない。
氷結のシャアリィ
教皇争奪戦編 終幕 ―――




