相変わらずのホーム
もう枢機卿だというのにフランコは安い宿に泊まり、シャアリィとアイシャも又、月契約の宿へと引っ込む。
明日こそは、フランコに付き合い、キャラバン車両の制作依頼をするぞ、と。
「アレックス、まだ、怒ってるかな?」
シャアリィは少しばかり心配したが、アイシャはそれ程でもない。
「大丈夫でしょ、お腹空いたからファイヤー亭行こう?」
「謝らなきゃだし、忙しかったらお手伝いも、だし?」
旅装束から街着に着替えて、二人はファイヤー亭に向かった。
こういう時、面倒なのは武具の携帯。
無名の頃ならば、いざ知らず。
さすがに宿に置きっ放しは無理があり、いざという時に備えれば商業ギルドの貸金庫に預けるわけにもいかない。
結局、持ち歩くしかない。
以前のような小さなワンドであればホルダーにも差せるが、今のシャアリィの螺旋杖は全長一メートル。
ぐるぐると布を巻きつけて隠すくらいしか、やりようもない。
・・・
「やっぱ、混んでるかぁ」
店の外まで聞こえる喧騒。
勢い、扉を開けて、入店。
「おう、耳あり、耳なし、飯か?手伝いか?」
アレックスは怒っていないようだ。
「両方!」
と、シャアリィが返事をして、厨房の棚の上に自分達の武具を置く。
「手伝いながら、合間に摘まむよ」
と、アイシャが言えば、オルチェがそれに応じる。
「ああ、そうしておくれ」
シャアリィはオルチェと代わってアレックスの炙りを手伝い、アイシャは酒作りと接客に勤しむ。
オリビアとマリウスも順調そうだ。
エレナとナッチェが代わる代わるやってきて、おかえりの挨拶。
ホーム感満載のファイヤー亭での仕事は忙しくても、二人にとって癒しの時間。
そんな時間はあっと言う間に溶けて、気が付けば閉店時間。
入り口を施錠すると、労いの言葉とささやかな宴会。
「ドタバタだったけれど、あらためて・・・おかえり、耳あり、耳なし」
シャアリィとアイシャは、元気に帰還を宣言。
「「ただいま」」
こうして人が増えても、距離感が薄まらないのがアレックスとオルチェ。
だから皆から慕われるのだろう。
「そろそろ、エレナも結婚?」
アイシャが切り出せば、ナッチェは少し寂しそうだった。
ずっと同じ部屋で暮らした姉がエドワードと暮らすようになれば、もう、すぐに甘えられる存在はいなくなる。
「もう少し先、ナッチェの成人と同じ時期、十一月にしようと思っています」
エレナも区切りを気にしていたのだろう。
大人になったのだから、と、いう言い訳がほしいのかも知れない。
「お姉ちゃんは過保護なのです」
「私は既に大人みたいなものだと言うのに」
ナッチェの抗議は、姉に対する不器用な愛情表現。
皆がそれをわかっている。
時間の流れは速い。




