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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
教皇争奪戦編
423/433

新教皇誕生

アレクサンドルの約定書提出から、一日を開け、教皇庁はそれを正式に受理した。

そして、その翌日、カルテリアルの面々に新教皇調印式が知らされた。


午後一時。


これまでの間、投票室として使われていた謀略の現場は、調印室へと姿を変えた。

一階の受付で、式に参加する騎士たちは武装の全てを預け、さらに保管庫には施錠が施される。

通路には十二名もの教皇庁衛兵が待機し、有事に備えている。


「これより新教皇調印式を行います」


教皇庁大司教、アーネストの言葉で、調印式が始まった。


「最終候補、前へ」


四人のカルテリアル代表枢機卿が一列に並ぶ。

その後ろには、各陣営が一塊となって式典を見守る。

居並ぶ列から、二人揃い、一歩踏み出せば遥か昔、学舎で見慣れた互いの顔。


「教皇選抜証人、ショット・ワイズリート枢機卿、前へ」


ワイズリートがさらに一歩前に立ち、参列者に向き直る。


「えー、私が得た一票をクリムゾン・アレクサンドル枢機卿との約定に従い譲渡、アレクサンドル卿が全ての票を獲得するに至りました」

「選抜証人として、調印し、それが間違いでないことを証します」


「選抜証人、調印」


アーネストの言葉のままに、ワイズリートは教皇確定証明書に中央大教会の印を押し、その下に自らの署名を書き加える。


「選抜証人、戻れ」


ワイズリートが代表枢機卿の列に収まり、向き直る。


「新教皇、調印」


一人、一歩前に残されたアレクサンドルが、前に進み、ワイズリートの隣に、西方大教会の印、署名を施す。


「注目」


アーネストが両手で証書を持ち、それを高く掲げる。


「第六十三代教皇クリムゾン・アレクサンドルより就任の言葉」


ワイズリート以外の全ての枢機卿が忸怩たる思いで、その言葉に耐える時間だ。


「錚々たる諸先輩方を抑え、教皇になれたことは私の人生の最高の喜び」

「そして、待ち受ける苦難の始まりであることを肝に銘じ、市井の人々の声にも耳を傾け、生涯を賭して救済の祈りに身を捧げることを誓います」


「打鐘傾聴」


教皇庁の鐘の音は、他の教会よりも重く荘厳な響き。

その鐘の音は六十三回打ち鳴らされ、新たな教皇が誕生したことを世に知らしめた。


「以上を持ちまして、新教皇調印式を終了します」

「皆さま、この度は長期間の教皇選抜お疲れ様でした」

「お気をつけて帰路について下さい」


直後、カイリィが、注意を発する。


「中央陣営、西方陣営は、そのまま待機を」


残されたのは、中央陣営二人、西方陣営六人。


「では、フランシスコ枢機卿、西方陣営の送り届けをお願いします」

「リーシャ・セロニアス・アビス殿、お一人でのお戻りが心細ければ、衛兵を伴わせますが、如何致しますか?」


リーシャは、笑って答える。


「遠慮するよ」


と。

部屋に残された、ワイズリートとアレクサンドル。

そこに衛兵が雪崩れ込む。


「クリムゾン・アレクサンドル」

「この時点より、貴殿の身柄は容疑者であり、その権限の全ては一時的に凍結される」


慌てふためくアレクサンドルを横目に、ワイズリートが嗤う。


「残念だね、クリムゾン」

「せっかくの教皇の椅子だが、きみはそれにただの一度も座れないんだ」

「罰が罪に追いつく、神学で習わなかったかい?」


カイリィが恭しく首を垂れ、


「教皇、後は我々が引き継ぎます」


と、言葉を掛けたのは、アレクサンドルではなく、ワイズリートだった。


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