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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
教皇争奪戦編
422/455

正式な約定

午後二時、指定された場所は、中央大教会、小会議室。

座席数二十程の小さな会議室には、長テーブルが一つきり。

両陣営は、枢機卿を上座に対面して着席する。


相変わらずワイズリートの隣にはリーシャのみ。

対する西方同盟は、アレクサンドル、アネモイ、フリードリヒ、シャアリィ、アイシャ、フランコの席順で着席。


「西方同盟の皆さま、ご足労感謝致します」

「この書面に我々の正式な要望を記しましたので、不備がなければ、西方大教会の印とアレクサンドル卿のサインを」

「書類に関するご質問があれば、何なりとお答えします」

「それ以外については互いの信頼関係に基づき、考慮頂くのが良いでしょう」

「言葉で繕った所で、最後には信じるか、信じないか、ですからね」


アネモイはワイズリートの言葉に深く頷く。

騙そうとするものは、騙されるのだ。

どんなに疑い深く、書面に穴が開く程見つめたとしても、そこに書かれていないことは見抜けはしない。


「昨夜は、夜分に申し訳ありませんでした」

「お寛ぎの所を邪魔してしまった上に、少々、物言いも無礼だったと反省しまして」

「お時間に関しては存分にお使い下さい」

「必要があれば、私達は席を外します」


アレクサンドルから、質問が出た。


「教皇になった時点、とは?」


ワイズリートが、それに答える。


「明確にするならば、教皇確定証明書にサインを終え、打鐘が終了した時点」

「それが新教皇の誕生の瞬間だと、教皇庁では定義しています」

「この書面でも、それに従うとしましょう」


アレクサンドルから二つ目の質問。


「干渉とは?」


飽きることもなく、ワイズリートは丁寧に説明する。


「何かを目的とし、接触を図ることです」

「それには文書や合図、その他の意志表示も含まれます」

「街で偶然に出会い、挨拶を交わすだけならば干渉ではありませんが、折角だからお茶でもどうかと誘えば干渉になります」

「勿論、相手側から接触してきた場合には、強制力を働かせるような行為がなければ干渉にはなりません」


よくもすらすらと、いろいろなことを決められるものだ、と、シャアリィは感心する。

アレクサンドルから、三つ目の質問。


「フランシスコを枢機卿に据える期限は?」


ワイズリートはフランコを見やって、


「それは書面に書かれておりますよ」

「その約定書自体がフランシスコ大司教を枢機卿に任命する証書です」

「ですから、アレクサンドル卿が、教皇になられたと同時に効力を発揮します」

「つまり、西方枢機卿の椅子の空白時間はゼロ」

「任命手続きの手間を省くと同時に、他者の介入リスクを無くしたのです」


アネモイは仕掛けに気付く。


「成程、流石はワイズリート卿」

「私も是非、こういう実践的な時間短縮を見習いたいものです」


そして、それを綺麗に隠蔽する。


「説明、感謝します」

「フランシスコ、教会印とペンを」


ワイズリートがその手でインク台を差し出し、アレクサンドルが西方大教会の印を約定書に押し、その下に自らの署名を書き加える。

その隣には、既に中央大教会の教会印が押され、ショット・ワイズリートの署名もある。


「お手数ですが、三枚」

「アレクサンドル卿の覚え用、私の覚え用、そして教皇庁提出用です」

「教皇庁への提出は同席されますか?」


そもそも、この書類を提出しなければ、アレクサンドルは教皇になれない。


「否、お任せいただければ、帰路の途中に私が教皇庁に足を運びます」


疑い深い、アレクサンドルならば、当然、そう答える。

その書類が、例え、自らを滅ぼす『毒』だとしても。


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