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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
教皇争奪戦編
421/433

最終報告会

翌朝、午前十時。

アレクサンドルの求めによって、同盟の面々が招集された。

場所は既に馴染みとなったティー・ラウンジ。

昨日の思わぬ話の流れに、アレクサンドルは顔を綻ばせて、同盟の面々に報告する。


とは、言うものの、同席していなかったのは、フリードリヒとアネモイだけ。

一応の体裁は、相談という形で二人の意見も聞く。


「昨晩、ワイズリート卿の予約なしの来訪があった」

「その来訪の目的は、二つ目の交渉について」

「ワイズリート卿から出された条件は」

「教皇になった時点から、ドラゴン・スレイヤーたちへの不干渉」

「空いた枢機卿の席に、フランシスコを据えること」

「何故、そのような条件なのか皆目見当も付かないが、それで教皇の椅子を譲る、と」

「金銭的な要求もなければ、レリットランスが不利になる条件もない」

「如何だろうか?」


フリードリヒは訝し気に首を傾げるが、アネモイにはワイズリートの思惑の片鱗は理解出来た。

それは自分がかつて政敵を葬ってきた手法の一つだからだ。

一見、不利に見えない約定の影に潜む、落とし穴。

その落とし穴について具体的な考察は出来ないが、その条件を飲めば、アレクサンドルは破滅するだろう。

アネモイは、そう考えたが、それをアレクサンドルに伝えるつもりはない。


「成程、レリットランスに関係するのは、枢機卿の後任人事」

「誰か分からぬ他所者が来るよりは好ましいではありませんか?」

「それに教皇になられれば、枢機卿の時よりも強大な権力で騎士を揃えることも可能でしょう」

「言い方は悪いですが、ドラゴン・スレイヤーの力は戦のためにあるわけではありません」

「彼女達は魔物と戦って武勲を示したのですから、教皇になられれば、必要もないかと」


澄ました顔で、ワイズリートの策略の後押しをする。

枢機卿でありながら、今までグリーンノウズを放置してきた男と、誠実に対話し建設的な約定を交わした男では、アネモイの評価は正反対だ。


「で、卿は同盟主として教皇になられるわけですが、我々にはどんな恩恵があるのでしょう?」


勝馬を見抜き乗っかったというだけのフリードリヒが、そう問えば、


「今は何をするという約定までは交わせる段階ではないが、まずは北部ナセルバ迷宮の新規地域冒険者章の発行の停止」

「それを第一に推し進めるとしましょう」

「それが最重要であり、改革の始まり」


既に教皇になった気分のアレクサンドル。

シャアリィとアイシャも、感じている破滅の足音。

だが、アネモイと同じように、それを気付かせぬように振舞う。


「教皇軍でも難しいような魔物の討伐なら、私達も助力することに異存はありません」

「『受難の聖女』のような化け物でなければ・・・ですけどね」


シャアリィが場の雰囲気を和ませ、笑いを誘う。


「では、皆、この条件で私が教皇になることに異論はない」

「そう思って良いのだな?」


全員の顔は、アレクサンドルの教皇就任を了承するもの。


「実に苦しい教皇選抜だった」

「この戦いに勝ち残れたのは、皆の支援あってこそだ、心より感謝する」

「特に、同盟参加の決断を下されたアネモイ領主様には、深い感謝を示しましょう」


傷付くことも、敗北さえも恐れずに本当の闘いをしたシャアリィを労わないことに、アネモイは軽蔑を感じながら、


「私は、勇敢な術式使い、シャアリィ・スノウを称賛します」

「私はただ、己の責務に従ったまで」


その言葉に気を悪くすることもなく、アレクサンドルが言う。


「琥珀のシャアリィ、敗れはしたものの見事な戦いだった」

「勿論、私もきみを称賛しているとも」


アイシャは怒りを噛み殺しながら、満面の笑顔で、


「シャアリィ、最初の交渉をやり遂げたのはシャアリィの手柄だ」

「この結末を誇っていい、と、私は思う」


フランコは、ただ何時もの飄々とした微笑み、皆の表情を見渡し、今回ばかりはあと腐れがないようにしっかりと見定める。


「では、本日、午後二時に予定されている正式な調印式へと臨みましょう」

「私達、西方同盟が教皇争奪戦で勝利したのです」

「午後七時より、階下のレストランを貸し切りましたので、無礼講の準備も万端です」

「短い間の同盟でしたが、皆さまのお力添えに感謝を!」


アレクサンドルは、その言葉に何度も頷く。


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