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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
教皇争奪戦編
420/432

最後の交渉

フランコは、中央大教会の中にあるカフェ・ラウンジで時間を潰し、ワイズリートに言われた通り、四方八方を探したが会えなかったとアレクサンドルに報告した。

既に夕刻。

さすがにこの時間から、再び、中央大教会に押し掛ける訳にも行かない。

アレクサンドルは焦燥に駆られながらも、今日のワイズリートとの面会を諦めた。


午後八時。

食事を終えたアレクサンドルにやるべきことはなく、歓楽街に出掛けるような気分でもない。

シャワーを浴びればすぐに眠れると、本を片手に酒をちびちびと啜る。


不意に扉を叩く音。

用心しながらフランコが扉を開ければ、そこにはホテルの従業員。


「お客様に面会の方が来ております」


アレクサンドルは素っ気なく、


「夜も更けた、お引き取り願おう」


と、実に当たり前のことを従業員に伝えれば、


「お客様は、ショット・ワイズリート枢機卿なのですが・・・」


その名を聞けば帰らせるわけには行かない。


「ティー・ラウンジをすぐに貸し切ってもらいたい」

「少しばかり支度に時間が掛かるので、そこでお待ち頂きたいと伝えてくれ」


フランコが、数枚の銀貨を従業員に握らせる。


・・・


アレクサンドルが急いで聖衣を着直し、ティー・ラウンジに向かう。

そこに待っていたのは、街着姿のワイズリートとリーシャ。

ワイズリートが、騎士を伴っている以上、シャアリィとアイシャも呼び出された。


「夜分、遅く済まないね」

「フランシスコ大司教が随分と私を探し回ってくれていたと、教会の者から聞いたんだ」

「骨休めに街に出掛けてしまっていてね、間が悪かった」

「そこで慌てて、ここにやってきた、という訳だよ」


互いの陣営は少しばかり酒の匂いがする。

この時間、交渉のテーブルに着くなど考えもしないのだから、お互い様という所か。


「さて、次の交渉のカードだが、まぁ、これはアレクサンドル卿の心一つで決まることだ」

「誰にも迷惑は掛けないし、誰の助けも必要ない」


その言葉で、アレクサンドルが前のめりになる。


「一言で言えば、ここにいる騎士を全員、私にくれないか?」

「正しく説明するならば、ここにいる若者の処遇を一任してもらいたい、が、適切だね」

「その条件ならば、私は喜んで教皇の椅子を譲るよ」


まずは、と、ワイズリートがフランコを見やる。


「空席になる枢機卿の椅子に、彼を」

「出来る限り、彼の意志を尊重した上で、互いに影響力を行使しない」


次に、と、今度は視線をシャアリィとアイシャに注ぐ。


「彼女たちに教皇の権限を及ばせない」

「ドラゴン・スレイヤーを抱えたまま教皇になれば、他の枢機卿の反発は目に見えている」

「そんなことにも気付かず席を譲ったのか、と、私は後から責められたくないんだ」

「彼女たちがアレクサンドル卿に付き従うというのならば、せめて戴冠式の後」


アレクサンドルは、疑いの目をフランコに向ける。


「何故、フランシスコを枢機卿にする必要があるのです?」

「彼はまだ若い」

「適任は他の領地でも探せると思いますが?」


疑っているのは、ワイズリートとフランコの癒着。


「ああ、それでも構わないんだがね?」

「アネモイ領主との同盟の際、立ち会った者がその責を果たすのが筋だろう、と」

「それに、西方の枢機卿というのは、いろいろと難しいと聞く」

「迷宮の管理、そして・・・この場では口出せない例のモノの管理もだよ」

「諸々を考えた上で、適切な人選だと思うんだが」


ワイズリートは、わざとほんの少しだけ声を大きくする。


「何より、きみを教皇にした功労者だろう?」

「私としても、無責任という訳にはいかないよ」


ワイズリートは席を立ちあがり、


「いずれにせよ、正式な決定は明日にしよう」

「今日は皆、酒も入っている」

「一晩じっくり考えて、結論を出せばいい」

「だが、予め言っておこう」

「次の交渉はない、とね」


アレクサンドルの表情を見れば、明日を待たずに答えは出ている。

四人の騎士は、多分、その口元の醜悪な笑みを忘れない。


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