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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
教皇争奪戦編
413/466

悪戯と決断

第二回投票。

それは予想もしない結果。


西方一票。

北方二票。

東方一票。


その開票の意味することは、ワイズリートの北方への投票。

意図不明な行動にアレクサンドルも、ニコラウスも、そして投票を受けたベネディクトさえもが瞠目する。


「何故?」

「と、言われたら、こう答えます」

「何時までも、だらだらと結果を先延ばしにするつもりはない、と」

「誰も票の取り纏めに動く気配がない茶番ならば、続ける意味はない」

「武力闘争を選択すべきだ、と」

「次回の投票結果次第では、私は何処かの領に宣戦布告しますよ?」


既に盤上を支配するのは、ワイズリート。

最早、駆け引きの段階ではなくなった。


・・・


アレクサンドルの本能が告げる。

これ以上深追いすれば、自身の命を掛けねばならぬ、と。

ベネディクトの落胆、ニコラウスの焦燥。

それらを構うことなく、ワイズリートは投票室から立ち去る。


・・・


ワイズリートの書斎、そこにはリーシャが不満気な顔で帰りを待ち侘びていた。


「お前は随分と楽し気だが、妾は全然面白くない」

「どうせ此度も茶番だったのであろう?」


ワイズリートは機嫌よく、リーシャのティーカップに極上の茶を注ぐ。


「姫君の言う通り」

「実に退屈な連中だよ」

「だからね、少しばかり悪戯をしてきた」


ほほう、と、リーシャは身を乗り出し、ワイズリートの土産話を期待する。


「次の投票次第では、尻に火を点けてやるぞ、とね」

「臆病者が誰か、すぐにわかるさ」

「楽しいだろう?」


リーシャはティーカップから唇を離し、


「姉様達は絶対に傷付けないように!」

「わかっておろうな?」


ワイズリートは、勿論さ、と、リーシャの髪を撫でた。


・・・


ホテルの貸し切りティーラウンジ。

西方同盟の面々を前に、アレクサンドルは苦々しく吐き捨てる。


「業を煮やしたワイズリートの一言で、皆、一つの選択肢が奪われた」

「もう、東方も北方も態度の保留は出来ない」

「私自身、どうするべきか・・・思案のし所」

「中央に委ねるか、まだ、抗うべきか」

「投票の結果次第では、ワイズリートは内戦の引き金を引くと宣言した」


額に汗を滲ませるアレクサンドルなど、フランコでさえ初めて見る。

逆に、シャアリィとアイシャは涼しい顔だ。


「アレクサンドル卿、あなたの信仰が試される時」

「あなたは唯一、三つの領地を束ねた枢機卿」

「まさか中途半端な幕引きなどしないですよね?」


シャアリィが意地悪く、アレクサンドルの退路を塞ぐ。

アイシャもここぞとばかりに、アレクサンドルを持ち上げる。


「失礼な物言いをするもんじゃないよ」

「アレクサンドル卿は、我々を戦火に巻き込みたくないからこそ、悩まれているのだ」

「私達さえ同意すれば、きっと、成し遂げられるはず」


アネモイはシャアリィとアイシャの意図を察する。


「我が領の命運は、卿の決断と共に!」

「その覚悟なくして、同盟を組んだわけではありません」


アレクサンドルの強張った表情が緩み、歪んだ嗤いへと変貌する。

それは狂気の笑み。

自らの野望の達成が目の前にあり、それに指を掛けているという破滅と隣り合わせの快楽。

脳内麻薬が溢れ、理性を野心が捻じ伏せる。


「応とも」

「私は西方同盟の盟主、皆の期待を裏切るわけにはいかぬ」


フランコだけは、目を伏せ、主の失着に少しばかり心を痛めた。


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