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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
教皇争奪戦編
412/442

狼のアネモイ

アレクサンドルの宿泊するホテル、その階下にはフリードリヒ、アネモイ、シャアリィとアイシャも宿泊している。

四人はアレクサンドルの帰りを待ち、本日の投票と今後の戦略について話し合う予定だ。


「ただいま戻りました」

「ティーラウンジを貸し切りましたので、ご案内します」


フランコがフリードリヒ、アネモイ、シャアリィとアイシャを先導し、アレクサンドルの待つティーラウンジに向かう。


「今日の報告を共有しよう」


と、アレクサンドルが会議の始まりを宣言する。


「投票結果は言わずもがな・・・各陣営が自らに投票」

「これは初手として当然」

「教皇争奪戦への参加表明のようなものだ」

「皆、承知の通り、現状、頭一つ飛びぬけているのは、中央」

「『受難の聖女』とか言う、化け物を見せられ、他の陣営は萎縮してしまった」

「恐らく、最後まで抗い、よしんば勝ちを拾えるのは我が西方のみだ」

「当初の目的である、打倒北方は叶うと見て間違いない」

「フリードリヒ卿、アネモイ領主様には顔向け出来そうだ」


淡々としながらも、アレクサンドルの眼光に曇りはない。


「しかし、そうなれば最終的に中央との対立は避けられぬ」

「アイシャ、シャアリィ、フランシスコには、また面倒を掛けるやも、だ」


シャアリィが嫌な表情も隠さずに言う。


「正直、私とアイシャで、ドラゴンを倒すのが精一杯」

「それにリーシャが加わるなんて、無理も無理」

「対立は構いませんが、武力闘争は出来る限り避けて頂きたいものです」


ドラゴンを倒せるだけでも称賛に値するが、それ以上が求められている現状は厳しい。

アレクサンドルは、笑顔を絶やさずに言ってのける。


「勿論だとも」

「それ以前に、我々が考えなければならないことは、北方と東方の利権」

「どちらも、タダで票をくれるようなお人好しではない」

「西方のことであれば、私が領主殿に捻じ込むが、レリットランスに関わることであれば、フリードリヒ卿、領主様、双方に頑張って頂かなければならぬ」

「ザグレブホーン、イルオールドは地政学的に見ても、隣国と接する辺境領だけに、その役割の負担を他領にも負わせたい所だろう」

「それが人的資源なのか、それとも金銭なのか」

「勿論、私が教皇となれば、ナセルバからの収益でそれを負担させる」

「ここで申し上げたいのは、教皇が決定する以前に約定を交わさぬこと」

「それだけは絶対に守って頂きたい」


アネモイは頷き、フリードリヒは笑顔で応じる。


「私の予想では、次の投票で東方か北方が尻尾を出す、と、読んでいる」

「西方同盟から票の買い付け料を上乗せさせるために、どちらか、或いは両方が中央に票を入れるだろう」

「そうなれば、奴らの魂胆もわかり、こちらが有利に事を運ぶことが叶う」

「次回、投票の結果を期待してもらいたい」


フランコが、次回の会議の予定を伝え、解散を告げた。


「では、引き続き皆さまのご協力、お願い申し上げます」

「これにて閉会ですが、アレクサンドル卿に火急の用件があれば、私にお申し付け下さい」


アレクサンドルと、フランコ、フリードリヒは席を立ち、アネモイ、シャアリィ、アイシャは引き続き、お茶を楽しむようだ。


・・・


枢機卿たちの退場を確認した後、アネモイが口を開く。


「正直、私は半分後悔しています」

「まだ取り返せる段階ではありますが、アレを見せられたならば・・・」

「本当に勝ち目はあるのかしら?」


アイシャが答える。


「戦いになれば勝ち目はありません」

「ですが・・・私とリーシャは姉妹です」

「身内同士で殺し合うなど、どれだけ望まれても御免です」

「ですから、最後まで戦い以外の決着を模索します」

「領主様のお力添えをお願いします」


アネモイは、微笑んで返答する。


「半分だけよ、後悔は」

「私自身が選んだことを誰かのせいにするつもりもなければ、ここまで来て負け犬になるつもりもありません」

「だって私は、『狼のアネモイ』ですよ」


冗談交じりの力強い言葉に、シャアリィも、アイシャも安堵した。


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