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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
教皇争奪戦編
410/432

余波

東方陣営は、既に教皇闘争を諦めた。

それは、ラモンの戦闘放棄が明確になったからだ。


「某の剣は、彼奴(きゃつ)には届かぬ」

「乗り掛かった舟故、未届けはするが・・・」

「竜を従えるような者は、既にヒトではない」

「このラモン、ヒトならば何人(なんぴと)だろうと切り伏せるが、アレは御免」


その言い分は、正しい。

『受難の聖女』を前にして、矛を交える等と言える者は、ただの愚か者。

既に東方はカルテリアル参加という大義も果たした。

さすがに同盟もなしに、教皇戦に勝ち残るのは無謀過ぎる。


だが、まだ取引できる材料はある。

カルテリアルの一票、それが全て揃わなければ教皇にはなれない。

最後まで強気の姿勢だけは崩さず、その一票で何らかの取引をすることが目的になった。


・・・


北方陣営は、経済力を武器に他陣営の篭絡や懐柔を狙う、が。

その雲行きは怪しい。

何故ならば、教皇になればナセルバ迷宮の権利に圧力を掛けることも出来る。

つまり、金貨数千枚程度の端金(はしたがね)等、中央や西方にとって魅力ではない。

仮に金で圧力を掛けるならば、ナセルバ迷宮の利権の半分は必要だろう。

国内最高水準の騎士、戦士を擁する北方であっても、『受難の聖女』には届かない。


「まだ、アレは完成しないのか?」


ベネディクトが魔石を買い漁っていた理由・・・それは超兵器の開発。

その名は、


『人工天使』


融合義肢の技術を応用した全身金属の身体。

腕を除く上半身をヒトとし、全身に複数の魔石を備える。

ヒトを越えた魔力伝達と魔力蓄積を可能にする魔道兵器。


完成どころか試験体運用もまだ出来ていない。

その工程は余りに複雑。

設計思想だけが先行している際物。


最早、教皇争奪戦には間に合わない。

『受難の聖女』のお披露目によって、ベネディクトの野望は潰えた。

そうなれば東方と同じく、中央と西方のどちらに票を入れるかの決断。


・・・


実際の所、ワイズリートはそれ程、教皇の椅子に拘ってはいない。

競り合う相手は、アレクサンドルだろう。

条件次第では、アレクサンドルに教皇を譲っても構わないとさえ思っている。


だが、その条件はアレクサンドルにとって致命的。

シャアリィとアイシャ、そして、フランシスコ、三人の身柄だ。

アレクサンドルがそれを飲めば、丸裸。

気に入らない法案は全て叩き潰せる。


そして、次に狙うは王族の支配。


アーシアン連合国を、アーシアン教皇国へと変貌させることこそがワイズリートの狙い。

それでも、アレクサンドルならば、要求を呑むだろう。

そうならなければ、全面戦争も厭わない。


「世界を敵にしても構わないね?」


と、リーシャに問えば、


「世界を壊しても構わないならば」


と、答えが返ってきた。


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