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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
教皇争奪戦編
409/450

ワイズリートとアレクサンドル

中央大教会付属の大教会神学校。

かつて、ワイズリートとアレクサンドルは同じ学舎の先輩、後輩の間柄。

神学、法学、経済学と三つも専攻が被れば、顔馴染みにもなる。

家柄も申し分なければ、共に学年主席。


二人の道を隔てたのは、彼らの師事する二人の教授。


アルピーヌ・シュラインとクレイン・ファルケルサス。

共に術式理論の専門家だが、一人は魔道寄り、一人は聖教寄り。

当時は未だ禁忌として悪名高い陰根源転換術式をも、シュラインは躊躇しない。

だが、ファルケルサスは、それを嫌う治癒術の専門家。


先に世に出たワイズリートは、魔道の観点を持つ天才として名を売り、早々に中央大教会の支部である、三十九番教会に司祭として任命された。


一年遅れて、アレクサンドルが卒業。

極めて優秀でありながら、活躍は目立たず、最初の赴任先であるグリーンノウズで悪党共の手荒い歓迎も屡々(しばしば)。

そして、アレクサンドルは、マーヴェリック騒動の真実を知る。

重なるように起きたのが、『廃棄の王』の幽閉。

清廉だったアレクサンドルの信仰は捻じ曲げられ、出世に拘る気質が形成された。


ワイズリートは表向き順調だが、実際はそうではない。

彼にも苦悶の日々が続いていた。

魔道というものを極めれば極める程にやりたいことは増える。

だが、己の立場を鑑みれば、それは決して許されることではなく、ただ夢想の中でのみ、様々な実験を繰り返す。


・・・


数十年の時が経ち、艱難辛苦こそあれ、二人は司教、大司教を経て、ついに枢機卿の椅子を手に入れる。

今までの歪みが解き放たれる時が来たのだ。


ワイズリートが目指したのは、無敵の術式使い。

自身がそれになるには、既に時遅く、素体探しからの着手だ。


アレクサンドルが欲したのは、権力。

それがあれば、大量殺戮さえもが思うまま。

四十代にして枢機卿の椅子を手に入れたならば、余生は余りに長過ぎる。

ならば、いっそ教皇の椅子さえも、と、虎視眈々。


既に二人には学舎で交わした言葉も、食事を共にした記憶も薄れ、その立場は政敵へと変わった。

そして、今、アレクサンドルは歯噛みする。


「『受難の聖女』だと?」

「なんだ、あの化け物は・・・お前は何をしていた?」

「私は、あんなもの知らんぞ」

「どうするつもりだ・・・」


叱咤されるフランコは、平常心。


「噂程度の信憑性であったために、お耳に入れるのもどうかと」

「私も正直、驚愕しております」

「まさか、竜を召喚し、短縮詠唱まで使うとは・・・」

「如何にドラゴン・スレイヤー達が屈強であろうと、あれでは、太刀打ち出来ない」

「最早、武力に関しては見限ったほうが得策かと」


アレクサンドルは、飲みかけのティーカップを放り捨てて喚く。


「そんなことはわかっておる!」

「このままでは最悪の結末、ワイズリートの天下ではないか」

「お前も何らかの策を用意しろ」

「さもなければ、無茶を承知で白銀と琥珀をぶつけるしかない」

「・・・待てよ?」

「あの女、リーシャ・セロニアスと言ったな?」

「白銀の血縁か?」


フランコはアレクサンドルの策謀を感じ取る。


「はい・・・」

「実の姉妹」


それを聞き、醜悪な嗤いに顔を歪めるアレクサンドル。


「囮・・・くらいには、使えるかもな」


最早、救いようもない外道。


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