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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
教皇争奪戦編
407/461

領主府での会合

三人は正装し、時間よりやや早く領主府に到着した。

アネモイは三人よりも早く、会議室に一人着座し、待ち構えていた。

上等なお茶が運ばれ、会議室から立ち去る侍従にアネモイが声を掛ける。


「外側から施錠し、衛兵も扉には近寄らないように」

「会議が終わればハンドベルで知らせる」

「それまでは、誰も、この部屋に近付かせてはいけません」


侍従の少女は恭しくアネモイの命を聞き入れ、それを衛兵に伝えた。

少し時間を置いて、扉が施錠される音がした。


「よくぞいらしてくださいました」

「アイシャ、シャアリィ、それと西方の客人」

「この場には私達だけ、腹を割った話し合いが出来れば有益かと」


アネモイの言葉で、会議が始まった。

最初からフランコは本題を切り出す。


「レリットランス領及び、南方大教会と同盟を結びたく、主の命を受けました」

「それについて、領主様のご意向や懸念などをお聞かせ頂きたい」


アネモイは首を傾げ、シャアリィとアイシャを見やる。


「その西方の意向に、何故、この街の英雄が同席しているのです?」


問われたアイシャは、正直に答える。


「ここにいるジョルジアット・フランシスコ大司教」

「彼に少なからぬ恩義があり、私達の立場は西方だと明確にするためです」


一瞬怯んだアネモイだったが、少しばかりの落胆を交えて、


「そう・・・」

「貴方たちはレリットランスの力だとばかり思いこんでいたわ」

「私の勘違いね・・・残念だわ」


シャアリィが、


「いえ、勘違いではありません」

「立場が西方というだけであり、レリットランスに協力したいとも考えています」

「私達はこの街が好きだからこそ、定住するつもりもあります」

「理想を言えば、西方とレリットランスを分けることなく、協力したい」

「だからこそ、フランシスコ大司教の同盟案は頷けるものなのです」


アネモイは、言葉を選ばないという前置きをした上で告げる。


「私は、西方とは相容れないと考えています」

「貴方たちもご存じでしょう?」

「経済力はあるけれど、治安は底抜け、賄賂、馴れ合いも当たり前」

「そんな領地と同盟など、無理ではなくて?」


フランコは頭を下げて、それを認める。


「そう言われることは覚悟の上で参りました」

「私達も、もう、座して黙認という振る舞いを脱しなければなりません」

「時間が掛かってでも、改善することを御約束します」


アネモイがさらなる懸念を表明する。


「旧市街区と新都の分断も大きな問題ですね」

「既に著しい格差社会が出来上がってしまっています」

「その是正も必要です」


フランコが答える。


「この二人が『廃棄の王』を倒したことによって、迷宮の管理費が随分と軽減されたのをご存じでしょうか?」

「医療や福祉に関しては、レリットランスを手本とし、改善に向けて善処します」


アネモイが核心を突く。


「既に西方はカルテリアルの一席、手中にあるのに何故、この領との同盟に拘るのです?」


フランコは、


「是が非でも、北部を打倒するために!」

「レリットランスが中央と組めば、戦力が分散されてしまいます」

「この領地の潜在能力は非常に高い」

「アレクサンドル卿は、それを踏まえた上で、私をこの席に送り出しました」

「正式な同盟となれば、当然、卿自ら署名を交わします」

「何卒、ご理解と、ご協力を賜りたく存じます」


アネモイの最後の問い。


「西方と同盟を組んで、我々は何を得るのでしょう?」


フランコは脅しにならぬように細心の注意を払い進言する。


「安定した物流の確保と、遥か海路の先、エンダーベルトから齎される近代的な生活魔具による領民の生活の質の向上」

「そのために必要な大型キャラバンの増便を約束しましょう」

「港は海運の拠点だけでなく、文化の発信地でもあります」

「レリットランスが迷宮都市から流通都市へ変革することに協力します」


アネモイが微笑む。


「貴方、とても良く勉強なさっているのね」

「そして言葉選びも私好み」

「『物流封鎖』というカードを切らずに、私を納得させるなんて、称賛に値するわ」

「良いでしょう」

「この命運、西方と共に!」

「既にフリードリヒ卿は、西方との同盟に前向き」

「アレクサンドル卿に、今後とも宜しく願います、と、お伝え下さい」

「では、私は執務がありますので、先に席を立つとしましょう」


そう言って、アネモイはハンドベルを鳴らす。

フランコは肩で大きな安堵の溜息を吐き、大仕事をやり果せた実感に身を震わせた。


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