どうあるべきか
アイシャは言う。
「どうして、そこまでレリットランスの同盟参加に拘るの?」
「中央との同盟を阻止するためだけなら、大した意味はないでしょう?」
「西方、中央、共にカルテリアルには駒を進める」
「それは誰が見ても間違いない」
言ってはなんだけど、と、シャアリィも同調する。
「この一手は悪手」
「だって私ならね?」
「どちらを排除するかと言えば、アネモイよりアレクサンドルを潰す」
「その方が平和だし、それに私達の枷もなくなる」
「罪を重ねるより、罪を清算するほうが賢いでしょう?」
アイシャもそれに乗じた。
「そうなれば、後継者はフランコ」
「あなたが教皇の椅子に座ることだって可能かも知れない」
「此処だけの話、それが一番、アーシアンにとって理想的」
フランコは目を細める。
「そうか・・・私の覚悟次第では、天秤を傾けることも出来る、と」
アイシャは頷き、さらに詰める。
「フランコも、私達も未だに試されているのだと思う」
「本当に自分の腹心足り得るのかと、ね」
「アレクサンドルという男は、そういう奴だ」
「誰も信じてなどいない」
「邪魔になれば、あなたも私達も容赦なく切り捨てられる」
「だから、あなたに内戦の引き金を引かせる訳にはいかない」
「私達は共犯者なのだから、ね?」
「どちらにしても、アネモイとの会談はしなくてはならないね」
「恰好だけでも、アレクサンドルの思惑通りに動いていると見せる必要がある」
「当然、失敗まで織り込み済みの策謀」
だから・・・
「あなたは最善を尽くして、アネモイと会うべきだよ」
「誤解を与えないように、聖職者らしく」
「ナセルバの現状を憂いている、と、言えばいい」
「そして、グリーンノウズの浄化を推進すると約束すればいい」
フランコは、それに従うことにした。
「権謀術数、手練手管、嫌になるほど沁みついたグリーンノウズのやり方」
「それを変えないことには、アネモイの協力は得られない」
「そういう事だね?」
シャアリィは、笑顔で答える。
「私達からの贈り物があれば、アレクサンドルも納得するでしょ?」
「アイシャ、あの魔石、あげちゃってもいいんじゃない?」
「多分、アネモイのことなんて、どうでもよくなるよ?」
アイシャが、小さなため息をついて、
「レッサー・デーモンの魔石があるんだ」
「封印術式は、エクスプロージョン」
「手土産には過ぎた品だが、面倒事よりマシだから、あげるよ」
・・・
三人は、その後、領主府に向かい、アネモイとの面会の約束をした。
西方のフランコだけであれば、当然、断られていたが、シャアリィとアイシャが一緒であると言えば、アネモイも察しがついたのだろう。
アネモイにとって、レリットランスにいるシャアリィとアイシャは、出来れば戦力に加えたい所なのだから。
フランコは会談の予定が組めたことをアレクサンドルに報告出来るし、何より、シャアリィ達から渡された手土産もある。
予想外の戦利品に顔を綻ばせるだろう。
朧げに陣営の姿が見えてきた。
北部同盟、中央、西部同盟、東部、そして諸島。
これが教皇庁に明らかになれば、カルテリアルは終了。
いよいよ、教皇争奪戦の開幕となる。
王家と貴族連合体は、有事に備え東部の兵を最小限に縮小し、中央に軍を集結させつつある。
・・・
「白銀と琥珀からの贈り物か」
「エクスプロージョンとは、随分、気前が良い」
「『廃棄の王』の魔石を手放した分くらいは働いて貰わねばな」
アレクサンドルは上機嫌で、フランコから魔石を受け取った。
フランコは、何時もの飄々とした微笑みを顔に貼り付けたまま、明日の会合の抱負を述べる。
「出来る限り、レリットランスを西方に引き入れるべく力を尽くします」
その声も上の空で、アレクサンドルは、ただ、結果を夢想する。
「北部のいいようにさせるものか」
「必ず、あの椅子は手にいれる」
「頼んだぞ、フランシスコ」
その笑みは、聖職者と呼ぶにはあまりにも歪んでいた。




