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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
教皇争奪戦編
404/458

最初の依頼

ナセルバに向かう人の流れは、緩やかになったものの、未だ止まる気配を見せない。

それは、北方領以外の全ての貴族の悩みの種だ。

人口というものは、領地の重要な基盤。

最も重要な資源であり、それが減少すれば領地の能力も当然衰える。


教皇の死によって明確になったのは、北方に対する不満だ。

人も、金も、物も、全てが北方に集められる。

それを食い止めることが貴族にとって最大の課題となって既に五年以上。


そして、もし、このまま北方のベネディクトが教皇となれば、最早、内戦が起きても不思議ではない。

それを阻止するために西方や中央へ貴族の支援は集まる。


『打倒北方』


と、いうスローガンさえもが各地で叫ばれている。

貴族たちにとって、今回のカルテリアルは遊びではない。

教皇選抜の前哨戦としてのカルテリアルで、西方や中央が北方を下すこと。

ナセルバへの人口流出を止める法案が出されなければ、死活問題という貴族も少なくない。


レリットランス領主、アネモイは、連合国の未来を考えれば、権力闘争などしている場合ではないと、各領主への手紙を送っている。

それは教会に対する批判と受け取られかねない程に現実的な未来予想を含んでいる。


「資源の一極集中は、貧富の差を広げ、それが紛争や治安低下に直結する」

「そうなれば国民生活の水準は下がり、負の螺旋が始まる」

「阻止するためには、思慮深い教皇を選ぶ必要がある」


と。


「フリードリヒ殿」

「私は西方との同盟には反対しますが、卿がカルテリアルで椅子を取ることには反対はしません」

「むしろ、そうして頂き、レリットランス領だけでなく、連合国全体の利益を考えて頂きたい」


高潔なアネモイの願いは、空回り。

フリードリヒにとって、枢機卿は『上がり』の席。

カルテリアルに属したいのであれば、西方でも、中央でも、憎き北方でも手を組んでも構わない。

自身が教皇になる欲などないのだから、自身の椅子が守られれば世は事も無し。


「アネモイ殿、落ち着かれよ」

「我々に出来ることは実際の所、多くはないだろう」

「連合国全体等という大義は、少々、荷が重いのではないかね?」

「むしろ、自分の意志を通したいならば、北方以外の強者と組むのが正解」

「そういう意味で、私はアレクサンドル卿を推しているのだよ」


もう数日も、平行線のまま。


・・・


ファイヤー亭に、手紙の到着よりも早くフランコが現れたのは、教皇の死から五日目。


「お?何時ぞやの司教さんじゃねえか」

「シャアリィとアイシャなら、もうすぐ帰ってくるぜ?」


言い終わるのと、ほぼ同時。


「あー、生臭坊主が来た!」

「悪の手先め、大変なことに巻き込みやがって」


シャアリィが怒るのは当然のこと。

アイシャも勿論、怒っている。


「あんたの上司に約束という概念はないのか?」

「なにがあと腐れなく、だ」

「いい加減にしろ」


フランコは溜息を吐きながら謝罪する。


「本当に申し訳ない・・・私の力ではどうにもならないんだ」

「今日も面倒な話を持ってきた」

「重ね重ね申し訳ない」


フランコが言い訳ひとつせず謝るのだから、シャアリィもアイシャも毒気を抜かれる。


「あれでしょ・・・」

「暗殺指令、とか」

「そんなの何処ぞの賞金首にやらせりゃいいじゃん」


シャアリィが吐き捨てる。


「否、私だって善良な者の命を奪うようなことはしたくないよ」

「だからこそ、二人に頼みたいんだ」

「アネモイを説得してくれ」

「この街の英雄であるきみ達なら、きっと彼女も耳を貸す」


アイシャは呆れながら、


「私達はもう、ただの若い娘だ」

「宗教家でも、政治家でもない」

「魔物退治ならば引き受けよう」

「或いは悪人討伐や、私達に敵対する者なら」


「説得出来なければ排除しろ、とでも言うのだろう?」

「恨みも何もない人間と殺りあうのは御免だ」

「私達にも理性くらいある」


二人の言い分は、至極真っ当。

だからこそ、フランコも胸が痛い。


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