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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
教皇争奪戦編
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教皇の死、枢機卿の野心

ついに、教皇アルメイザスが百二年の生涯を閉じた。

歴代の教皇と同じく、『不老不死』を待ち焦がれ、永らえた命が燃え尽きた。

愚かだと枢機卿たちは心の底で唾棄していても、いざ、自分が教皇になったならばどうか?

この広大なアーシアン連合国で、王家とも並ぶ権力を持ち、手に入らないものなどない状況ならば、渇望するのは何か?


それはもう、究極の欲望、あり得ない奇跡。

若返りか、老いも病も寄せ付けぬ完璧な肉体。


だが、時間遡行の術式も、不老の術式も、この世には存在しない。


あるのは死を受け入れて尚、蘇りを繰り返すという狂気の術式。

それも決して無限ではないし、痛みという対価を支払わなければならない。


『不老不死』とは、幻想だ。


・・・


アーシアン連合国全土の、経済活動、それが一日、完全に停止する。

役所、ギルド、商店の全てが停止し、キャラバンや遠洋の漁船だけが操業を許される。

国民全てが喪に服し、教皇のために祈りを捧げる。


首都では、槍騎士を先頭に教皇の棺を担いだ葬列が行進。

アーシアンの街の者は皆、その葬列を見送るために街路に立ち涙する。

中央大教会の聖廟で葬列は止まり、国中から集まった枢機卿による祈りが捧げられる。


「ああ、偉大なる父君よ」

「その生涯は苦難と栄光に満ち、神の御許に渡るに相応しい」

「多くの民草に施し、救いの拠り所となりし聖者」

「その魂が、今日、召されたことに深い悲しみを現すことを許し給え」

「死は安寧、死は平等、死は救済」

「皆、悲しみは今日に留め、明日からは希望を以て歩む」

「ああ、偉大なる父君よ」

「その聖名(みな)は、フェルテス・アルメイザス」

「今、その生きた証を墓標に刻まん」


十分近くも鳴り響く、百二回の鐘の音。

絢爛な金刺繍の聖衣に包まれた、やせ衰えた老人の遺骸。

宝剣と法杖、宝冠を胸に棺の蓋が閉じられる。

そして、棺は冷たい土の底へ。


後は皆、家路につき、静かな一夜を過ごすだけ。


・・・


アレクサンドルは嗤う。

仮に今回、自分が教皇になれないとしても、自身は最年少の枢機卿だ。

それにカルテリアルに選ばれるのは、既に確実。

後はショット・ワイズリートが教皇に選出されるのを防ぐだけでいい。


現時点、教皇選抜の最有力は、ベネディクト。

それはナセルバを押えているという強運が味方している。

衰退するザグレブホーン枢機卿カッサーノは、当然、ベネディクトとの同盟を望むだろう。


「フランシスコ、フリードリヒは落ちそうか?」

「ヴィルテはどうだ?」


そう問われ、フランコは返答する。


「卿が、ドラゴン・スレイヤーと懇意だということはフリードリヒも知っています」

「ですが、アネモイは中央との同盟を希望しており、まだ、確定には漕ぎ着けておりません」

「ヴィルテは、海路封鎖を恐れているので、西方か東方のどちらかにしか付けません」

「交易での有益性で我々に着くのが得策だとは、考えているようです」


では、と、前置きしてアレクサンドルが命じる。


「まずはアネモイ・・・堅物だが、やり手の雌狼か」

「ちょうど、白銀と琥珀がレリットランスにいるのだろう?」

「篭絡もよし、排除もよし、方策を考えろ」


・・・


ベネディクトが上等なワインを飲みながら、ロザリーに命じる。


「例の二人・・・ドラゴン・スレイヤー」

「あれが欲しい」

「何とかならないものか」

「金ならば幾らでも積もう」

「北の地ならば、貴族籍を与えても構わん」

「必要なものは用立てる、なんとか連れてくるのだ」


ロザリーの表情は固い。


・・・


ニコラウスは迷っている。

ベネディクト、ワイズリート、アレクサンドルが三強。

自分が四つ目の椅子を取った所で、教皇になれる可能性は限りなく低い。

属領のフェザーエリスがあると言った所で、術式封じの迷宮は人気もなく収益は低い。

他の三人に並び立つには、目玉が必要だ。


「ラモン・・・ドラゴン・スレイヤーと戦えば、お前とどちらが強い?」


ラモンは心にもないことを平然と言う。


(それがし)ならば、白銀、琥珀を討つことなど造作もござらん」

「しかしながら、国中の人気者を討てば、貴兄の立場が悪くなりはせぬか?」

「それよりも、ヴィルテを篭絡し、力を付けるのが得策」


・・・


ヴィルテは、海路封鎖を警戒しながらも、中立を維持したい。

誰の敵にもならず、現状を維持すれば文句はない。

今までも諸領の争いに加担せず、独自の経済圏を守ってきた。

教皇などという野心はない。


「せめて、あのドラゴン・スレイヤー程の騎士がいたならば、勝負にもなるが・・・」


それでも、戦力増強には前向き。


・・・


シャアリィとアイシャは、自分たちが多くの枢機卿の興味を引いていることなど知る由もない。


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