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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
教皇争奪戦編
401/450

教皇庁にて

中央大教会に隣接する、教皇庁総合管理棟の最上階。

招集発表から二週間という時間を経て、全ての枢機卿が顔を揃えた。

時間が掛かったのは、ヴィルテ。

やはりエンダーベルトからでは、大型帆船に倍する速度の高速艇でもグリーンノウズまで六日間、教会専用旅客車両でそこから七日。

さすがにこれ以上の速度で移動するならば、グリーンノウズから単身で早馬に乗る以外ない。

御年六十七才のヴィルテがそれをするには無理があった。


教皇庁の最高責任者アージェル・カイリィから状況の説明が為される。


「皆さま、ご存じとは思いますが、教皇様の意識レベルは既に昏睡に近く、何時、他界されても不思議ではない状況でございます」

「悲しい現実ではありますが、それに際し、我々が歩みを止めるわけには参りません」

「つきましては私の権限において、教皇様が亡くなった翌日より、カルテリアル選抜を開始することをここに表明します」


カイリィの声を受けても、枢機卿たちは沈黙のまま。


「皆さまの中でカルテリアルを辞退される方がいれば、速やかに名乗りでて立場の明確化を示して頂きたい」

「既にマルティーニ卿は、アレクサンドル卿に一任するとの回答を得ております」

「我々、教皇庁としては、極めて穏便なカルテリアル選抜、新教皇選抜を願うばかりです」

「何卒、ご協力を賜りたくお願い申し上げます」


・・・


続いてカイリィの部下である、アーネスト大司教からの説明。


「長旅でお疲れかと存じます」

「教皇庁の宿泊施設をご利用頂くも、市井のホテルをご利用頂くも自由ではありますが、各陣営、お一人連絡係を選出し、ご登録と、教皇庁への滞在をお願い致します」

「不意の情報伝達に問題が発生しないための措置です」

「同伴された騎士の方々は、申し訳ありませんが、本日以降教皇庁の区画には入ることは出来ません」

「公平性を保つために、教皇庁では如何なる武力の行使も認めておりません」

「問題を起こした陣営は、カルテリアルから排除されますので、ご留意願います」


そこでベネディクトが声を上げた。


「アーネスト君、我々は皆、此処にくるのも初めてではない」

「諸注意に関しては、常日頃から留意している」

「今回のカルテリアルに限って、特別な事柄がなければ解散で良いのではないか?」

「年寄りも多い中、時間の浪費は謹んで貰えるとうれしいのだがね」


アーネストが揃っている面々を見渡せば、百鬼夜行。

揃いも揃った妖怪たち。

その静かな眼光だけでも恐怖に値する。


カイリィに視線で合意を取ると、アーネストは速やかに諸注意の伝達を切り上げた。


「了解致しました」

「では、カルテリアルが始まるまでの待機時間、ご自由にお過ごし下さい」


・・・


ベネディクトの傍らには、ロザリー。

カッサーノには、イザベラ。

アレクサンドルには、フランコ。

その他の枢機卿たちも、錚々たる顔ぶれの戦士たちを連れている。


その中でも目を引くのが、ニコラウスに侍る『人斬りラモン』。

元はミヤマの鍛冶師の一人だったが、刀剣に魅せられた挙句、屋敷を蓄電し『賞金首狩り』で生計を立てている男。

何故、ならず者にも近しいその男がニコラウスの元にいるのか。

教会という場所に、異質な存在は警戒されても仕方あるまい。


現教皇、フェルテス・アルメイザスの命が何日永らえるのかは、わからない。

だが、既に治癒術すら限界であることから、招集が掛けられているのだから、長くは保つまい。


アレクサンドルは、フランコに耳打ちする。


「白銀と琥珀を動かせるようにしておけ」


この日を見越して二人に与えた魔石。

武力で些か劣る西方の切り札。


ワイズリートは、様々な密談を交わす連中を眺めながら、小さく口角を吊り上げる。

所詮は無駄なこと・・・そう、彼の手駒は桁違い。

だが、披露するには、まだ早い。


「カードをめくれば王手(チェック)

「それまでは、大人しくしていておくれ姫君」


隣に佇む、黒いフードの少女にそう語り掛けた。


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