閑話:教会組織
エドワードの職場である踏破記念治癒院も、人材が揃いつつあった。
治癒師の数は十八名となり、教会から派遣される修道女の数も増えた。
エドワードは夜勤から解放され、院長の仕事に専念できるようになった。
市井からの寄付金、援助物資も常に充実している。
見返りとして、隣接する土地に孤児院とホスピスを建造し、それらを定期的に巡回する業務が増えた。
今まで、領主府と各種ギルドがサポートの中心だった所に、教会が大きく関わることで多少、宗教色が強くなってしまったが、弊害は今の所ない。
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レリットランス教会は、これまで表立って活動することがなく、他の大教会と比較しても様々なことで後塵を拝してきただけに、医療分野で大きくなろうという狙い。
それには昨今の教皇の健康不安が背景にある。
教皇選抜に挑むためには、第一段階である四大枢機卿に選ばれなくてはならない。
中央のショット・ワイズリート。
北のエルフォリア・ベネディクト。
西のクリムゾン・アレクサンドル。
既に三つの席は埋まったも同然。
残りの一席を争うのが、現教皇のお膝元、現時点でのカルテリアル・メンバー、北方辺境ザグレブホーン。
レリットランス、ウィトプラナ、エンダーベルト、イルオールドの枢機卿たち。
この中で、ウィトプラナの枢機卿、ジョイス・マルティーニだけは、迷宮が近隣にない為に資金的にも端から勝ち目がなく、繋がりの深い西方を支援するという立場を明確にしている。
又、北方辺境は近年衰退が著しく、このままではカルテリアルを除名されるのは確実。
それでも尚、立場を維持することは領地の復活にも影響するため、善処しなくてはならない。
北方辺境枢機卿キュリアス・カッサーノ。
南方枢機卿ベルン・フリードリヒ。
唯一の女性枢機卿、諸島群枢機卿ロマーナ・ヴィルテ。
東方辺境枢機卿ダニエル・ニコラウス。
四人の枢機卿は、カルテリアル最後の椅子を懸けて地道な内政干渉を続けている。
自領の生産品を守るための持ち込み税や、領地から離れる際の持ち出し税、出産費用、葬祭費用の補助等。
カルテリアルに加わることが出来なければ、立法に関わることが出来なくなる為、大きな損失や不利を被る可能性があるだけでなく、有事の際の支援も後回しにされるのだから死活問題。
さらに王家から拠出される活動資金もカルテリアルの魅力だ。
例え教皇を輩出することが出来なくとも、カルテリアルのメンバーであれば恩恵は大きい。
教会の序列を決めるのは、
戦闘力。
経済力。
人口推移。
貴族への影響力。
民衆からの支持。
布教実績や地域貢献実績。
つまり、その教会の総合的な有益性。
但し、これらは教皇選抜には影響しない。
教皇の選出に関しては、あくまで個人が対象であり、個人の能力によってはカルテリアル最下位であっても教皇に選出される可能性は十分にある。
それらを教皇庁が独自に数値化し、決定する。
教皇庁という組織は独立機関であり、大教会に対しても査察権限を持つ特権組織である。
アーシアン連合国に存在する全ての教会は、地域大教会に所属していなくとも、教皇庁からの命令には従わなくてはならない。
教皇が死去すれば、一ヶ月以内にカルテリアル選抜が実施され、さらに一ヶ月以内には、新たな教皇が決定される。
カルテリアル選抜までが教皇庁の仕事であり、教皇の決定に関してはカルテリアル・メンバー全員の同意が必要だ。
このアーシアン連合国での教皇という立場は、王族にも匹敵する。
教会を敵に回せば、王族や貴族さえも宗教儀式が出来なくなるのだから。
神を信じる者にとって、それは地獄に墜ちるという意味であり、死後の安寧が奪われる。
だからこそ、この世界での教会は絶大な権力を持つ。




