研修
客商売をやっていただけあって、オリビアの接客は最初から安心出来るものだった。
客あしらいも上手く、何より、ちゃんと声が出ている。
マリウスは年齢からしても、まだ、接客に出すわけにはいかない。
材料切りや、洗い物、キッチンの中での仕事だ。
それでも、オルチェにしてみれば、随分と楽になると感じる手際。
普段から母を手伝っていたのだろう。
炙り練炭で焼き鳥を炙らせれば、なかなかに勘がいい。
これは拾いものだと、アレックスは思った。
初日の研修を終えて、オリビアには銀貨七枚と銅貨五十枚。
マリウスには銀貨四枚が支払われた。
「どうだ?忙しかっただろう?」
「やれそうか?」
と、アレックスがマリウスに問えば、少年は目を輝かせて答える。
「大丈夫です。ホールに出られるようになれば、もっと活躍してみせますよ」
と、頼もしい返事だ。
オリビアもまた、アレックスの問いに、
「本当に繁盛しているお店なんですね」
「少々、驚きましたけれど、週にお休みが二日もありますから、大丈夫です」
オルチェが麦酒の木製ジョッキと、ソーダの瓶を持ってきて、
「腹減ってるだろ、五本ばかり残しておいたから、食べて、飲みな」
「遠慮なしで、ほら」
「これも研修の一部だよ」
黒猫姉妹も、楽し気にそれを眺めている。
「今日は楽だったね、このくらいが丁度いいんだけど・・・」
と、ナッチェが言えば、エレナがそれを少し叱る。
「さらに稼ぎが出るようにしないと、でしょ?」
「でも、本当に来てくれて助かります」
ファイヤー亭は、開店してから、ずっと満席続きの繁盛店。
アレックスが適度に臨時休業を入れても尚、皆の疲れはなかなかに取れない。
シャアリィとアイシャが物騒なことを言い出す。
「こんな感じでひとを増やせば、そのうち二号店も出せそうね?」
アレックスは嫌な顔をして、
「出さねえよ、俺はオルチェと二人のんびり食ってければと思って店を出したのに、全然、のんびりできねえ」
「冒険者の頃より、ずっと忙しいじゃねえか」
「二号店?なにそれって感じだよ」
アイシャは、あーあ、ぶっちゃけちゃった、という残念な眼差し。
「もし、ずっと、ここで働いて一人前になったら、二号店、僕が出したい」
と、マリウスが突然の決意表明。
「だって、こんなに美味しい鳥料理が、銅貨二十枚なんだもの」
「絶対に売れるに決まってる、すごいよ、これは」
と、アレックスの焼き鳥を絶賛した。
マリウスはずっと考えている。
病気がちな母に早く楽をさせてあげたい、と。
そこにエドワードが登場。
「おお、エド、すごくいい人たちを紹介してくれたな」
「持ちつ持たれつってのはいいもんだ」
「今日は、一杯奢るぜ?」
と、アレックスが上機嫌に言えば、
「じゃあ、貰おうか」
「オリビアさん達がちょっと心配で見に来ただけなんだけど」
「どうやら、大丈夫そうだね」
と、院長先生の口調で喋るエドワードをシャアリィが笑う。
「患者さんにはぶっきらぼうじゃないんだね?」
エドワードは、少し顔を赤くして頭を掻いた。




