親子の面接
安息日、エドワードに紹介されたという女性が、ファイヤー亭にやってきた。
「オリビア・キャナリィと、申します」
「この度は、院長先生の計らいでここをご紹介して頂きました」
「以前は、宿屋の下働きをしていました」
と、連れている少年を見やる。
「この子は、マリウス・・・十一才です」
「読み書きと簡単な計算なら出来ますので、お手伝い程度ならば出来ると思います」
マリウスは、礼儀正しく頭を下げて、
「マリウスです。母の助けになるなら、一所懸命働きます」
実に聡明な少年だと、アレックスは感じた。
「うちは、居酒屋っていうか焼き鳥屋っていうか、まぁ、酒と食事を出す店だよ」
「基本的な仕事は、最初のうちは品出し、会計」
「慣れてきたら調理とか、その他のことも出来るようになってもらいたい」
アレックスは言葉を濁すのは苦手とばかりに、
「条件なんだが、日当は最初のうちは時間あたり銀貨一枚銅貨五十枚」
「マリウスの仕事の出来次第では、それに追加を出す」
「休みは、安息日と月曜日・・・だから、月の給金は・・・」
マリウスが答える。
「大体銀貨百五十枚、ですね?」
その計算の速さにアレックスが驚く。
「ほう、俺より計算が早いとはね・・・それと別で宿代を支給しよう」
「宿代は一日当たり銀貨六枚計算で、一ヶ月分、銀貨百八十枚」
「合わせて月給は銀貨三百三十枚」
オリビアは余りの好待遇に驚く。
「そんなに頂いても大丈夫なのですか?」
「前の宿屋では、住む場所は提供してもらってましたが、月に銀貨百枚」
「休みも安息日だけでしたので、貰い過ぎではないでしょうか?」
アレックスは真剣な顔をして、
「その分、仕事は忙しい」
「それこそ、営業時間中は息をつく暇もないくらいにね」
「たまに時間外のちょっとした用事を頼むこともある」
「良ければ日当も出すから一日見学するといいよ」
アレックスの言葉にマリウスが喜ぶ。
「母さん、そうさせてもらおう」
「僕にも出来る仕事なら、この方の所で働きたい!」
ちょうど買い出しから帰ってきたのはナッチェ。
「初めましてナッチェ・シュバルツです」
「ご夫妻のお世話になって、一年と少々、不束者ですがよろしくお願いします」
「ご主人、添え物用のキャベツ、いいものありましたよ!」
「あと、銀貨が貯まり過ぎなので、明日は入金に出掛けて下さい」
オリビア達にとって、初めて関わる獣人種。
そのふわふわとした愛らしい見た目に反して、仕事はてきぱきしている。
そのうち仲良くなれば、撫でさせてもらえるかも、等と、余計な事も考える。
「うちの従業員の一人、ナッチェだよ」
「あと、うちの女房とこの子の姉がここでは働いているんだ」
「それと、きみたちも知っているかな?」
「ドラゴン・スレイヤーの二人」
「あの子たちも手伝ってくれてる」
ドラゴン・スレイヤーという言葉に、マリウスの瞳が輝く。
が、アレックスがその幻想を砕くように。
「趣味で焼き鳥焼くような、へんな奴らなんで、あまり気にしなくていい」
酷い言い草だった。




