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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
教皇争奪戦編
397/407

労働は尊い

夕方のファイヤー亭。

開店と同時に押し寄せる人の列。

すぐに八割くらいの席は埋まり、全員で大量のオーダーを捌いている。


「焼き鳥を十本と麦酒」「焼き鳥五本とウイスキー・ソーダ」

「焼き鳥二十本、麦酒二つ」「焼き鳥五本、ライス・ワイン」


焼き鳥が飛ぶように売れている。

一本銅貨二十枚という価格設定が、非常に好評のようだ。

余りの売れ行きに、鶏肉を切る専用の機械と、炙り焼き専用の火鉢を職人ギルドで作ってもらい、串打ち機まで買ってしまったという。

アレックスの仕事は、具材の位置調整と炙りだけとなり、提供速度はかなり早い、が、それでも客が多過ぎる。

おまけに持ち帰りまで受けているのだから、一日千五百本用意する焼き鳥も毎日完売。

最近ではオルチェさえもが、火鉢を前にして焼き鳥を炙っている。


既に居酒屋というより、焼き鳥専門店となりつつある。

エレナが酒の提供を担当し、ナッチェは品出しと会計に走り回る。

さすがに耐えられなくなって、ファイヤー亭は従業員の募集を始めた。


「いやさ、確かに儲かってる・・・が、死ぬ」


というアレックスの要望で、ファイヤー亭は週休二日となった。

安息日と翌月曜日は連休。

そうしなければ資材の買い付けもままならない。


「早く従業員さん、こないかな・・・」


と、ナッチェは意味もなく短冊を窓辺に飾ったりしている。


・・・


「労働は尊いねぇ」


と、言いながら、シャアリィとアイシャ、エドワードがやってきた。

エドワードを奥の席に置き去りにして、シャアリィとアイシャは店の手伝いを始める。


「ラッシャアイ、注文、まだのひとはいますか?」


と、最近ではシャアリィも慣れたもの。

アイシャもエレナと場所を代わって、エレナがナッチェの品出しと会計を手伝う。

元々、頭の良い二人は、てきぱきと仕事を消化し、少しばかりの暇な時間。


「アレックス、少し休んだら?」

「私が交代するよ?」


シャアリィが炙り台の前に立つが、夏の気温と練炭の熱気にげんなり。


「これ、毎日やってたら、死ねるね?」


アレックスは、氷水を飲みながら、


「だろ?繁盛も楽じゃねえよ」


と、贅沢な悩みを吐く。

戦争のような時間が過ぎて、深夜十時を回る頃には焼き鳥は完売。

残り二時間の営業時間は、穏やかに過ぎていく。

激務から解放された黒猫姉妹は、エドワードと戯れることを許され、オルチェは麦酒を煽って笑う。


「頭使わなくて良くなった分、アタシはこっちのが性に合ってるよ」

「何より、長居する客が減って、回転率がいい」

「おまけに酒もすこぶる売れる、いいこと尽くめさ」


日付が変わると営業時間も終了。

入り口に施錠をして、身内だけの細やかな飲み会が始まる。


「おまえさんたちは、まだ、何か始めたりしねえの?」


と、アレックスに問われれば、シャアリィが答える。


「今は、こことエドワードのとこの手伝いでいいよ」

「毎日、楽しいし、ずっと冒険ばっかりだったから、世間に慣れないとね」


アイシャも言う。


「みんなの所が落ち着くまで、そうするよ」

「特にファイヤー亭の従業員募集は急務だ」

「そうでないと、せっかくエドワードの仕事が落ち着いても、エレナが忙しいままじゃ、新婚もままならないでしょ」

「誰かいい働き手はいないかなぁ」


そこで手を挙げたのがエドワード。


「うちの入院患者に、母子家庭のひとがいるんだが、そろそろ完治するんだ」

「元の働き先は解雇されてるらしいから、当たってみるよ」

「年は、俺らより少し下で、子供もナッチェより少し幼い」

「一人で留守番ってのは難しいだろうが、軽い手伝いくらいなら出来そうだし」

「まぁ、本人の希望次第だけどな」


既に指定席のようにエドワードの隣に座るエレナが、


「あの方たちなら、いいですね」


と、太鼓判を押す。


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