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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
教皇争奪戦編
396/399

氷結龍の魔石

アーシアンの公園。

街の人々の憩いの場所に、新しいモニュメントが置かれた。

それは、シャアリィとアイシャの迷宮踏破記念碑。


手元には物騒なスキルの入った魔石が三つ。

氷結龍のものと、レッサー・デーモンのものが二つ。

デーモンの魔石は、踏破証明として領主に召し揚げられたので手元にはない。

レッサーの魔石に入っていた術式は、エクスプロージョン。

火炎の上級術式で、半径十メートル以内の任意の場所に火炎を降り注がせる。

そして、氷結龍の魔石には、エグゼ・ヒール。

その価値は金貨五千枚。

聖職者ならば、喉から手が出る程欲しい最上級術式だ。


踏破報酬金貨三千枚、踏破年金はレリットランスと同じ二パーセント。

今まで稼いだ財貨は、それ以上なのだが・・・

十代で貴族の資産にも匹敵する金額を稼いだのだから、もう、働く必要もない。

商業ギルドに長期預金として放置するだけでも、生活が出来てしまう。

そして、それは毎年膨れ上がっていくのだ。


そこで二人は考えた。

まずは、家を買おう、と。


候補地は勿論、レリットランス。


・・・


商業ギルドで売り物件を物色。


「立地は、衛兵通りがいいです」

「家自体は新しくても古くても構いません」

「古ければ、建て直しますので!」


いよいよ、定住。

夢は広がる。

衛兵通りならば、一階を改装すれば商売も出来る。

どうせ住むのは二人だけ、リビングさえ広ければ来客にも困らないだろう。

提案された場所は、ファイヤー亭から十軒程北に離れた場所。

中庭つき築三十年、二階建て。

市街区なので最大四階建てまで建築可能という良物件。

商業ギルドと交渉に交渉を重ねて、土地付き新築三階建てを金貨七百五十枚で購入することとなった。


当面、一階は物置。

二階にキッチン等の居住スペースを確保し、三階を寝室と書斎等に。

屋上には、サンルーム。

冬の深夜ならば、星空だって見えるかも知れない。


「契約も無事に終わったし、後は完成まで内緒にするだけだね」


まだ、当面は宿屋暮らし。

新居の完成までには半年程掛かるらしい。

特にやることもない二人は、エドワードの治癒院を手伝うことにした。

一応、アイシャは無資格ではあるものの、中級治癒術式を持っている。

シャアリィの「気持ちだけヒール」とは、訳が違う。


ある日の夕方。

業務を終えたエドワードを院長室に引き留め、シャアリィとアイシャが手渡したものは、


フローズン・ドラゴンの魔石。


「おいおいおいおいおいおい、なんだよ、その魔石」


余りに大きな無色透明の魔石にエドワードが怖気付く。

シャアリィは、いいから、いいから、と、言って、


「それ、額に当てて、封印解除って言ってみ?」


と、半ば騙し討ちでエドワードに魔石を使わせる。


「こ、こうか?封印解除」


次の瞬間、エドワードの脳に刻まれるエグゼ・ヒールの術式と詠唱句。

エドワードは顔を真っ赤にして、呆れながら怒る。


「おまえら、なんてことをしてくれたんだ・・・」

「くそう、こんなすげえものなら、俺なんかが使うより他にいい使い道あっただろうに、馬鹿だろ・・・おまえら・・・」


ただでさえ涙脆いエドワードだけに、号泣。


「毎回、毎回、なんなんだ・・・俺に何をしてほしいんだ」

「わけがわからねえよ」


アイシャは答える。


「それを使うのに一番相応しい者を選んだつもりだよ」

「その術式ならば、必ず、きみの助けになる」

「目の前で失われる命をひとつでも多く救えるんだ」

「私達のような業の深い人間には必要ない」


シャアリィも笑う。


「院長先生なんだからさ、最上級術式の一つも持ってないとね」

「これも、導き、思し召し?」

「まぁ、もう使っちゃったんだから、諦めて人助けに励みなよ」


エドワードは涙を拭いながら頷いて、


「ああ、しこたま人助けしてやるよ」

「見てやがれ・・・くそう・・・」

「・・・感謝するよ」

「もらいっぱなしで悪いな」


三人は、連れだってファイヤー亭に向かった。


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