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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
394/416

イングリット・パーティの最期

反射で飛び退いたマルシェだけが、カース・シャドウを免れた。

そして、ネロが三節詠唱で視力回復する。


アイシャはマルシェを追い、シャアリィはネロの首筋にダガーを突き立てて、捩じる。

命を奪うまでには至らないが、喉を潰されては、もう詠唱は出来ない。

詠唱の出来ない聖職者など、木偶以下。


続けてシャアリィが、アイス・ブラストをぶちまける、と。

健気にもネルソンが自分の身を呈して、仲間への被弾を防ぐ。

だが、ネルソンは完全に氷結し、シャアリィがそれを無常に蹴り砕く。


「呪え!」


敵陣の中央でカース・サークルを展開。

フェイは出血、アマーリアは麻痺、アルテーアは睡眠、ゼノビアには恐慌が付与された。

双子の姉妹は床に倒れ伏し、ゼノビアは立ち竦む。


フェイだけがカース・シャドウを脱し、眼窩、鼻腔、耳、口、あらゆる穴という穴から血を溢れさせながら、風の上級術式を詠唱するが、シャアリィの短縮詠唱に阻まれる。


「壊れろ」


自身の詠唱陣が飛散する様に、フェイは瞠目、恐怖し、何度も繰り返す。


「壊れろ」


どんなに早口で詠唱しようとも、六節詠唱では間に合わない。


「化け、化け物!」

「やめろ、来るな」


シャアリィは満面の笑みを湛えたまま、素早くフェイの喉を切り裂く。

ごぼごぼと喉から血が溢れ、フェイも又、床に倒れ伏す。

ゼノビアは逃走を図るも、足が全く言うことを聞かず、狼狽える。

シャアリィと目が合い、嘆願の言葉を重ねる。


「見逃してくれ、死ぬの、嫌だ・・・頼む、何でもする・・・」


シャアリィは優しく微笑んで返す。


「だーめ」


次の瞬間にはアース・ランスがゼノビアの腹部を貫いた。

やがて、アマーリアが麻痺から解放され、すぐさま、シャアリィに襲い掛かる、が、格下のダガー使いなどシャアリィの敵ではない。

至近距離からのストーンバレットを頭、胸、腹に喰らい絶命。

アルテーアが目を覚まし、悲鳴を上げる。


既にイングリット・パーティは壊滅状態。


「ひっ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ・・・」


シャアリィは楽しそうに告げる。


「そう、これは嘘なの」

「あなたも死ぬといいよ?」


使った魔力を補充するように、サンドプリズンに閉じ込める。


「ぎゃあああああああ、いたいいたいいたい」

「い・・・た・・・・・・ぃ」


十秒すら持たず、その身体が消え失せる。


アイシャに追われながらも、その様を盗み見ていたマルシェが、消える。

シャアリィは、逃げ道を塞ぐようにカース・サークルとヴェンジェンスを詠唱し、扉に立ち塞がる。

マルシェに出来ることは、もう、残り少ない。

魔石を奪って、シャアリィを倒し、脱出するしかないが・・・

シャアリィと戦闘になれば、当然、サイレント・ムーブは解除される。


(まずは魔石だ)


その踏み込んだ場所には、アイシャが仕掛けていた罠がある。

ピスタチオの皮だ。


「パキッ」という予想外の音に驚き、マルシェのサイレント・ムーブが解除された。

その一瞬で、アイシャは最大半径の彗星棍をひと薙ぎし、マルシェの左脚をへし折る。

マルシェの元に白い死神が歩いてくる。


「やぁ、マルシェ・イングリット」

「マッカーシー・パーティの意趣返しだ」

「心配しなくても、死体は残らない」

「ほら・・・あんな感じで」


アイシャの指差した先で、シャアリィがアマーリアの身体をサンド・ブラストで磨り潰す。


「きみたち悪党には、墓標すら必要ない」

「よくもあの日、私のパーティを全滅させてくれたね?」

「そこにいるシャアリィも被害者さ」

「彼女は地獄の底から蘇ってきた」


転倒しながらも構えた双剣。

だが、その刃が届くことはないとマルシェ自身も理解していた。


「殺す気なんてなかった」

「ちょっと驚かす程度で・・・」


言い掛けた口に、アイシャが鵺斬を突っ込む。

マルシェは双剣を投げ捨て、降参の合図をした。


「公式謝罪をさせたい所だが、私の妹の立場もあるのでね」

「ここで沈黙してもらうよ」

「教会との約束を破ったんだから、当然だよね?」


そう言うと、アイシャはそのまま鵺斬をずぶずぶと押し込む。


「ごがっ、げぇえ、やべで、あっ」


残されたネロが失禁しながら、床を這う。

シャアリィがその背に踵を乗せて、


「腐れ!」


と、言えば・・・それがイングリット・パーティの全滅の瞬間だった。

面倒なことになる前に、と、シャアリィが死体を一つづつ磨り潰す。

全ての復讐を終え、アイシャの顔が晴れ晴れしたかと思うとそうではなかった。


むしろ、それは悲哀に満ちたもの。

アイシャはやっと、悲しむ自由を手にいれたのだ。


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