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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
393/395

アーシアン迷宮踏破

早朝。

日が昇って直後、朝靄の掛かる迷宮への道。

シャアリィとアイシャは欠伸を噛み殺しながら迷宮へと向かう。

アーシアンの迷宮前には幾つかの露店があり、そこでコーヒーとホットドッグの朝食。


「昨日はよく眠れたかい?」

「ドラゴン・スレイヤー」


定番の挨拶となりつつあるが、まだ、少しこそばゆい。

シャアリィが愛想よく答える。


「何時も快眠ですよ・・・迷宮探索って結構ハードですから」

「もう、ベッドに入ったら三分でぐぅ、ですよ」


衛兵と互いに笑い合って、


「最近、迷宮の中ってどうなんです?」

「ちょっと人が増えたから揉め事とか、乱闘とか、ルーキー・キラーとか」

「そういう物騒なことあるんじゃないかなって」


アイシャが、心配そうな顔で衛兵に尋ねると、


「確かに人は増えたが、俺たちの仕事は増えてないよ」

「ずっと、こんな感じでいてくれりゃあいいのに」

「最深部はどうだい?」


問われたアイシャが、


「狩自体は結構楽勝なんですけれどね」

「やる気が起きないっていうか」

「面倒くさくなってきたというか」

「あはは、贅沢な悩みですよね」


衛兵も笑う。


「俺だって、あんた達くらい強ければ、下の方まで行って冒険したいね」

「でも、ほら、若い頃から怠け者でさ」

「そういうのは、あんた達に任せるから、是非、踏破してくれ」


空いている手と手を打ち鳴らし、挨拶を終えると、シャアリィとアイシャは迷宮に入る。

アイシャは何時も同じ道順は通らない。

一箇所、二箇所、必ずルートを変える。


「ジンクスのようなものさ」

「この方が集中力も途切れない」


と、説明されたが、シャアリィは、少しばかり面倒だなと思う。


・・・


七階層、件の二重玄室。

その扉を開けるのは、少々、勇気が必要だ。

だが、それでも開けない限り始まらない。


重苦しい扉は、これまでの玄室の扉とはまるで異なり、それだけでここが最終玄室だと理解出来る。

レッサー・デーモン二体と、デーモン!

最終玄室に相応しい魔物。


漆黒の肌、二対の角、上半身には蝙蝠のような翼があり、下腹部から下はヤギ。

上級術式を使い、その体力はドラゴン程ではないが、かなり強い。

そのデーモンを守るように赤い肌の下級悪魔も控えている。

小さな角と長い尾、それ以外はデーモンと酷似している。


「私がデーモンを引く」

「シャアリィはレッサーの処理を!」


アイシャがそう口にしたものの、全ての悪魔たちはアイシャ目掛けて突っ込んでくる。

シャアリィはアイシャの背を追うように、少しばかり奥まで踏み込んで、


「閉ざせ!」


カース・シャドウを叩きつける。

デーモンは、それをレジストしたが、レッサーは視界を奪われた。


「いいぞ!」


アイシャはデーモンと対峙し、シャアリィはレッサーの一体をエレメンタル・バーストで袈裟斬りにし、片付ける。

あまりの瞬殺にデーモンは、目標をアイシャからシャアリィに変えたが、それは裏目。

背中から彗星棍の連打を浴びて、片方の翼を失った。


まだ暗闇の中にいるレッサーにシャアリィがアイス・ブラストをぶちまける。

全身に穴を穿たれ氷結した身体に間髪いれず、アース・ランス。

シャアリィはレッサーの沈黙を確認し、アイシャの護衛に回る。


最早、近付くまでもなく、アイシャは移動砲台戦術、シャアリィもアイス・ブラスト。

一斉射撃の前には、さすがのデーモンですらも膝を折る。


そして留めはアイシャの鵺斬の一撃。

首を刎ねられたデーモンの目から殺戮の光が消えた。


まさか・・・これで終わり?

そう思っても不思議ではない程の呆気ない終幕。

シャアリィとアイシャは分担して魔石を抉り出す。


レッサーでさえもが、かなり大きめの赤み掛かった魔石。

デーモンはそれよりも大きな黒い魔石。


当然、なんらかの術式が入っていると感じる程にその気配は禍々しい。

たまたま相性が良かったのか、それとも、シャアリィとアイシャが強くなったのか。

瞬殺劇とも言える迷宮踏破だった。


だが、問題はここから。


アイシャは中央に陣取り、自身の周辺にピスタチオの皮をばら撒いた。

シャアリィはアイシャの少し後ろに控え、玄室の魔力ロックが解放されるのを待つ。

ここに踏み込んでくる者がいるならば、それは敵で間違いない。


そして、その敵は重苦しい扉を開けて、堂々と入ってきた。

最早、姿を隠すまでもないという、イングリット・パーティ。


「随分とだらだら、時間を稼いでくれたじゃないか」

「さぁ、魔石を渡しな」

「そうしたならば、手早く、あの世に送ってやるよ」


その視線は、床に転がった魔石に注がれている。

アイシャは、悪党の決まり文句を鼻で嗤い、


「私達の殺し方を何度も見せてやったのに、ここまで来てしまったのか」

「愚かにも程があるね」

「私達は何もかも承知の上で、ここにいる、その意味がわかるか?」


マルシェは、答える。


「わからないけれど、教えてくれる必要もないよ」

「じゃあ、死ね!」


シャアリィが落胆の溜息をつく。


「死ぬのはおまえたち」

「身の程を知れ」


直後、たった一つの言葉で、イングリット・パーティの命運は尽きた。


「閉ざせ!」


それはシャアリィのカース・シャドウ。


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