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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
391/395

ピスタチオ

迷宮から出て最初に向かうのは、宿屋。

返り血まみれの服は放っておけば、手の付けようがなくなる。

渇ききる前ならば、漂白剤に漬けておけば大体なんとかなる。

たらいを借りて、お湯を張り、血で汚れた衣服を放り込んで漂白剤をぶち込む。

ぐるぐると掻き混ぜれば、すぐに汚れが剥がれて中のお湯が茶色くなる。

それを二度程繰り返せば、綺麗さっぱりとはいかないものの、随分と血汚れは落ちる。


最後にもう一度、お湯をはってそこに少量の漂白剤、あとは数時間の漬け込み。

そこまでやってから、二人は出掛けることにした。

揃いの街歩き用の涼し気なワンピースを着れば、ただの少女の気分に戻る。


戦利品を冒険者ギルドに持ち込み、街歩きで使うには十分過ぎる程の金貨を得て、最近、馴染みにしている『ドラゴンフライ』というカフェテラスに入る。

シャアリィが最初に見つけ、アイシャに、


『どらごんふらいって、どんなハエ?』


と、聞いたのが始まり。

アイシャはくすっと笑って、


「ハエじゃないよ?トンボだよ」


と、シャアリィに教えた。

シャアリィがメニュー表に掛かれたトンボの姿を見つけて、


「お前もドラゴンの一味だったかー」


等と笑った。


「ウォッカ・トニックと、カシューナッツと、ピスタチオ」


と、シャアリィがオーダーすれば、アイシャも乗る。


「私もウォッカ・トニック、こっちにはソルト・ピーナッツを」


オーダーが届いて、アイシャがシャアリィに尋ねる。


「ピスタチオって皮剥くの面倒じゃない?」


問われたシャアリィが答える。


「面倒だから良いこともあるんだよ・・・食べすぎない」


と、言いつつ、シャアリィは器用にピスタチオの皮をパキパキと手早く剥く。


「そんな速さで剥けるなら、食べすぎちゃうでしょ・・・」


案の定、ナッツ類でお腹いっぱいになってしまったシャアリィ。

床に落としたピスタチオの皮を拾おうとして、誤って踏み付ける。


「パキッ」


という音と共に割れた皮が床を汚す。

シャアリィは店員に謝りながら、皮を剥いた皿を渡すが、その手をアイシャが引き留める。


「この皮、頂いてもいいですか?」

「花の肥料にしたいので」


店員は快く大きめの紙で、ピスタチオの皮を包み、アイシャに渡してくれた。

シャアリィは不思議そうな顔でアイシャを見る。


「そんなものどうするの?」


と、アイシャに問うが、


「ここでは実演出来ないから、外に出たら教えるよ」


と、はぐらかされた。


・・・


先程の予告通り、店から出るとひとつ路地裏に入り、そこに先ほどのピスタチオの皮を二つ、三つ転がす。


瞬間、アイシャの気配が薄くなる。

どうやら、気配遮断を使用しているようだ。

そして、ピスタチオの皮の上を歩く。


「パキッ」っという先ほどと同じ音。


シャアリィはそこで気付く。

アイシャがにやりと笑って、無言で頷く。


・・・


残り九つの玄室。


どう足掻いても、勝負が着くまでに数日。

アイシャが提案したのは、


『一日一室』


随分と面倒な話だが、ここ数日冒険者ギルドでの顔触れを見る限り、自分達以外に迷宮踏破が叶いそうなパーティはいない。

ならば、徹底的に焦らせるのは実に面白いと、アイシャは思った。

シャアリィとアイシャが動けば、イングリット達も動かざるを得ない。

初日から当たりを引く可能性もあるが、それはそれで結構。

ここまで焦らされて、まだ、計画が破綻していないなら、その根性は大したものだ。


日の出から、日暮れまで、二人を付け回すだけでも、相当にしんどいだろうに。

以前、アイシャはシャアリィをサディステックだと言ったが、アイシャも相当だ。


アイシャは敵には本当に容赦がない。


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