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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
385/395

三つ目の玄室

辿り着いた七階層。

ここまで来れるのは、アーシアンの冒険者でも五パーティくらいしかいない。

それ程までに六階層攻略は難しい。

初見殺しの罠、玄室に入れば強力な魔物、通路にいても徘徊性の魔物に見つかる。

勘の良い冒険者ならば、自分たちの力量が追い付いていないと悟り、五階層に戻ることも叶うが、そうでなければ、じりじりと消耗させられ帰れなくなる。


最低限必要なのは、精密な地図と優れた斥候。

そして、何より連戦に耐えられるだけの魔力と体力。

踏み入るには、レベル百程度は必須。

レベル五十程度でも、満足に狩りが出来る五階層とは訳が違う。


「少し寒いくらいだね」


と、シャアリィが零せば、アイシャも、


「うん、真夏でこれだからね」

「冬の探索はもっとエグいよ」


そして、直後、知らされる、索敵。


「シャアリィ、後方からだ」

「数は多くないが、大型種だ」


アイシャのその言葉通り、現れたのはフロスト・ジャイアント、氷の巨人三体。

かなり強い術式耐性を持っているが、土石の術式ならば減衰はない。


「貫け!」


シャアリィの先制のアース・ランスが先頭の巨人を串刺しにする。

駆け寄る二体目の巨人は、アイシャの鵺斬の一閃で片足を潰され移動不能。

それを乗り越えて現れた三体目の巨人をシャアリィがサンド・プリズンで拘束する。


アイシャは、移動不能になった巨人の頭部を彗星棍で破壊。

シャアリィは、術式をそのまま行使し、巨人を磨り潰した。

最初に串刺しにされた巨人がよたよたと近寄れば、魔力を使わせるのも勿体ないとばかりに、アイシャが彗星棍の連打で粉砕する。


本来であれば、希少なフロスト・ジャイアントの魔石だが、骸を放置したまま、シャアリィとアイシャはマッピングを再開する。


・・・


シャアリィ達の後を追い掛けているイングリット・パーティにしてみれば垂涎ものの魔石だが、この魔石に手を出せば、自分たちの動きも露見してしまう。

七人所帯は戦闘では有利だが、収入の分配に関して少々難がある。

パーティの人数が多くなればなる程に分配は減り、その分、余分に戦闘をしなければならない。

必然、素材剥ぎの腕前だけは上達する。


こうしてサイレント・ムーブで隠れ、シャアリィとアイシャを追う中で、何度も目にしてきた骸の放置。

自分たちの技量を棚に上げ、二人の行為を傲慢と批判する。


こうして付かず離れずいれば、先行する二人がマッピングをしてくれるのだから魔石や素材を剥ぐことが出来なくとも我慢する。


・・・


左廻り三つ目の玄室。

風変わりな鎧を纏うファントム、その手にはアイシャと同じ片刃刀剣。


サムライ・ファントム!


それは最上級の幽霊戦士・・・俊敏な動きから放たれる一撃は、一刀両断の威力。

だが、アイシャはにやりと嗤い、鵺斬は鞘込めのまま。


「シャアリィ、下がってて」

「剣士同士の一騎打ちだ」


アイシャの尋常ならざる気配を察知したのか、ファントムも果し合いを承諾したかのようにアイシャと対峙する。

否、他所に注意を逸らしたならば、一刀のうちに斬られると判断したのかもしれない。

ファントムの黄色く光る目が、僅かに細くなる。


アイシャが息を吐き切った瞬間、ファントムは巧みな足捌きでゆらゆらと接近してくる。

中段に構えた剣を振り上げる仕草はない。

それは刺突による攻撃を意味する。

刺突攻撃は最も避け辛く、急所を貫かれたならば即死もあり得る。


アイシャはその刺突を見切り、身体を重力に任せ沈めると同時、居合の斬撃を見舞う。

鵺斬はその威力を十二分に発揮し、敵を両断した。

が、アイシャと同じく術式も使うのがサムライ・ファントム。

アイシャの真下に詠唱陣が開く。


勿論、その術式がアイシャに届くことはない。

シャアリィがジャミングで詠唱陣を破壊するのだから。


泣き別れになった下半身を放ったまま、アイシャがファントムの身体を袈裟斬りにすれば、その身体は煙が解れるように歪み、魔石が床に転がる。


最早、最上級のファントムであっても、シャアリィとアイシャに掛かれば造作もない。

二人の地力は、レベル相応。

この七階層であっても、魔物に劣るものではないのだ。


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