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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
384/395

サイレンス

七階層前の玄室ルームガーダーを倒せば、玄室を休憩所代わりに出来る。

そう見込んで侵入した玄室に潜んでいたのは、


アークメイジ・ファントム。


その先制攻撃の術式は、


『サイレンス』


脱出を試みるも玄室は魔力ロックされており、敵を倒す以外に術はない。

シャアリィとアイシャは二手に別れ、物理戦闘を強いられた。


アイシャの真下に詠唱陣が開き始めれば、アイシャは即離脱。

そこに降り注ぐのは上級術式エクスプロージョン。

火炎の弾幕が開いた詠唱陣を埋め尽くす。


ファントムの背後から、シャアリィはダガーを突き入れるが手応えの無さに恐怖する。

首を捻りシャアリィを睨むのは、黄色い眼光。

反転するように杖を振るい、シャアリィの脇にそれがヒットした。


一瞬、重症を覚悟したものの、所詮は術式使いのファントムだ。

その痛みは打撲程度。

アイシャも肝を冷やしたが、シャアリィの無事を確認すれば、思わず笑みが零れる。


「術式に当たらなければどうということはない」


アイシャの鵺斬が、アークメイジ・ファントムの頭上に振り下ろされれば、まさに真っ二つ。

古びたローブの幽霊は消え、魔石だけが床に転がる。

しかし、シャアリィは、精神的なダメージが大きい。


仮に最弱のファントムであるシーフだったならば、シャアリィは重症、落命の危険まであったのだ。

敵の物理攻撃を直に受けるということは術式使いにとって致命的。


サイレンスの術式が解除され、無音の空間に音が戻る。


少しばかり気分転換が必要だと感じたアイシャは、シャアリィにキャラメルを投げ渡す。


「いい動きだったよ」

「手応えの無さに驚いたでしょ?」

「シャアリィが魔物相手にダガーを使うことなんて滅多にないから」


その言葉が、自分をフォローするものだと気付いたシャアリィは、


「相手がシーフだったら・・・」


その先をアイシャが自分の言葉で上書きする。


「きみは接近戦なんて挑まない」

「もし、挑んだとしても、もっと慎重だったはずさ」

「今の被弾は、ただのきまぐれ」

「気にする必要はないよ」


それが気休めだとしても、アイシャの言葉だからこそシャアリィに届く。


「そっか、でも、一発貰ったのは確かだし」

「もっと私も気をつけないと、だね?」


アイシャはシャアリィの髪を撫でて、


「うん」

「それでいいんだよ」


「さて、今は回復だ」

「七階層は、厳しい戦いになる」

「そこにマッピングの手間が重なるんだ」

「今、休むことは絶対に必要」


アイシャはシャアリィの指先を求めて、シャアリィはアイシャの指先を求めて。

しっかりと握って、休息を取る。

背中に感じる床の心地よい冷たさ。

掌から伝わる温かさ。

シャアリィも、もう、気持ちは落ち着いている。


互いに回復を確認しあった後、アイシャが新しい地図を広げた。


「階段を降りて左廻りに私達はマッピングしていた」

「最初の玄室も、二つ目の玄室も、外れだと知っているからパス」

「通路には徘徊性の魔物が多いけれど、中身がわからない玄室に逃げ込むのはリスクが高い」

「だから、通路での戦闘を終える度に小休止」

「玄室での戦闘が出来る程度には回復していないとね」


七層のマッピングが捗らない原因。

それが、かなりの数の徘徊者たち。

それを駆逐しながらでは、さすがのマッカーシー・パーティも梃子摺(てこず)っていたのだろう。


「一つづつでも、埋めていこう」

「当たりを引けば、それで終わり」


アイシャの笑顔に、シャアリィは頷いた。


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