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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
382/395

竜殺しの偉業

フローズン・ドラゴン

アース・ドラゴン

テンペスト・ドラゴン

イグニス・ドラゴン


亜種を含めれば、相当の種類が存在する。


ファイヤー・ドラゴンや、ウォーター・ドラゴン、ハリケーン・ドラゴン、ダート・ドラゴンのような二級竜。

成れの果てである、ドラゴン・ゾンビィ。


それらを倒すことですら、簡単ではない。


総じて言えることは、単独でありながら、通常の冒険者を全く寄せ付けない強さ、強力なブレス、魔法耐性、無尽蔵とも言える体力、属性術式の数々を備え、朽ちる際には呪いを残すものもいる。

最強と呼ぶに相応しい魔物たち。


討伐は遥か昔のたった一度、百名もの人海戦術の果てに掴んだ勝利。

それをたった二人で討伐するなど、前代未聞。

そもそも、名有りを一つ倒すだけでも、百年単位の出来事なのだ。

シャアリィとアイシャの竜討伐は、教会の早馬の速度でアーシアン中に知らされた。


西方でアレクサンドルは驚嘆の後ににやりと嗤い、その傍らで大司教となったフランコもまた、小さな拍手をした。


エンダーベルトでは、アンナの拍手喝采、偉業の傍らに自身の杖があったことを誇る。


フェザーエリスでは、セロニアス達が瞠目し、棟梁、長兄でさえもまんざらでない様子。


イルオールドでは、ミヤマの屋敷で晴れの食事が供され、刀剣の使用者を称え、冒険者ギルドでは悪夢のような日々を振り返り、冒険者達が、まぁ、仕方ねえけど喜ぶか、と、酒を酌み交わした。


レリットランスの面々は、シャアリィとアイシャの無事を喜び、ファイヤー亭が一晩限りの飲み放題、ロートシルトは顎髭を梳かしながら、二人の遺した言葉を噛み締めて、『黒猫のテラス』では、ドラゴン・スレイヤー・フェアでチョコレートが半額になる。


ザグレブホーンでは、イザベラとロザリーが思い出を語りあい、アンソニーが届かなかった思いを振り切るように長弓の鍛錬をする。


そしてアーシアンでは、リーシャが自分のことのように喜び、ワイズリートが新たな巨星の偉業に策謀を巡らせる。


『ドラゴン・スレイヤー』


その響きは、全ての冒険者の憧れのようなもの。

英雄の象徴であり、畏怖の対象。

たった二人の年端もいかぬ少女がそれを成したならば、と、多くの者が自分を鼓舞する。


その陰もまた大きい。

鬱積と逆恨み、羨望と嫉妬、自虐と八つ当たり。

自分が上手くいかないのは、持って生まれた星に恵まれなかったと酒場で管を巻く連中。

そんなことは自分には全く関係ないと言いつつも、嫌悪する弱者。

澱み、濁り、腐る、(はらわた)の中の感情。


それらの視線を一身に受けるシャアリィとアイシャ。

まともな神経ではいられない、が。

そもそも一度殺されかけた相手に数年を掛けて報復するなど、端からまともではない。


誰の思惑がどうであろうと、次に目指すのは迷宮踏破。

そして、その時が報復のフィナーレだ。


丸一週間の休息を挟み、遂に二人は未踏破領域へと踏み込む。

未だ見ぬ迷宮の通路、玄室には、さらなる竜が潜むとも噂されるが、その真偽さえも定かではなく、構造上七層が最下層という見立てすらも裏切られる可能性もある。


敵は魔物だけではない。

否、敵を仕留める為に、この罠を仕掛けるのだ。

そして、それを成した暁こそが、


『本物の自由』


それに至れないのならば、手に余る金貨も、洗練された武具も、いらない。


沢山の命を摘んできた。

魔物も、人も。

敵対者であれば、容赦なく、関係なく、遠慮なく。

最後の扉を抉じ開け、そこにいる最難関の魔物を倒してこそ、その命も報われる。


今はただ、この微睡と愛しい者との戯れが全て。

ただ数日だけの幸せの満喫。


そして、また、迷宮へ。


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