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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
381/399

ドラゴン・スレイヤー

神様でも叶えられないことは山程ある。

否、神様が叶えてくれることなんて、ない。

願いを叶えるのに必要なものは、


『金』


聖職者ですら、口にする。

神の名の元に金銭を教会によこすならば、『浄財』であると。

それによって罪の一部は贖われると。


教会直下の治癒院は、言わば金持ち専用とも言える。

シャアリィとアイシャは、そこに向かい治癒を受ける。

金さえ積めば世は事もなし、手配書の回った犯罪者でもない限り断られることもない。


「腕のいい方をお願いします」


と、最初の受付で献金盆に金貨を乗せれば、話は早い。

それ程待つこともなく、立派な治癒室に通されて、上級術師が飛んでくる。


「自覚症状に関しては、少し曖昧なので、一番良い術式でお願いします」


そう言って、アイシャが小袋一杯の金貨を見せれば、治癒師も心得たもの。

フランコのエンジェリック・ヒールとまではいかないものの、最上級の術式であるエグゼ・ヒールがシャアリィを癒した。


「あら、さすが」


その効果はやはり強力。

倦怠感は失せ、耳鳴りは病み、快眠後の清々しい気分同様の絶好調。

シャアリィは上機嫌だ。


「神の導き、思し召し、貴方の浄財に感謝を」


と、言いながらアイシャから小袋を受け取り、神の使徒たる上級術師は足早に去る。


・・・


「一回のエグゼ・ヒールで金貨二十枚は、ちょっと、多かったかな」


と、アイシャが笑えば、シャアリィも同じように笑いながら、


「浄財、浄財、アンナも言ってたじゃん、あの世までは持っていけないよ?」

「私、ちょっと偽善って好きだな」


シャアリィが満足しているならば、アイシャにとって無駄遣いではない。

教会から出た、その足で冒険者ギルドに向かう。

リーシャにも会いたかったが、夕暮れ近い時間では、向こうも何かと不都合だろう。

少しばかり後ろ髪を惹かれながら、通りを歩く。


真夏の石畳の照り返しは、少々、厳しい。

堪らず寄り道したのは、何時ものようにアイスクリームの露店。


「こういう日はシャーベットだね」


と、シャアリィは今が旬の葡萄のシャーベットを選んだ。

アイシャはそれを横目にシェアする前提で、定番のバニラを選ぶ。


時折交換しながらの食べ歩き。

ほんの数刻前、死闘を繰り広げたことなど、忘却の彼方。


「パンとバニラって似てるよね・・・食べ飽きない所とか」


と、シャアリィが言うと、アイシャも頷きながら、


「私は最近、ライス党になりつつあるよ」

「ミヤマの屋敷の食事といい、エンダーベルトのうなぎといい」

「アンナの作ったスパイス・スープも、ライスだったからね」


他愛ないお喋りをしつつ、冒険者ギルドに着く。

そして、フローズン・ドラゴン討伐成功を告げ、魔石を披露する。


「・・・もう、絶句ですね」

「この魔石どうされますか?」

「素の売却より、鑑定してからの売却をお勧めしますけれど」


と、受付嬢に問われれば、


「術式が封印されているなら、それ次第」

「お金には余裕あるから、売却か使用かは結果で決めるね?」


と、シャアリィが鑑定依頼。

では、と、受付嬢は手早く預かり証を発行する。


ドラゴン・スレイヤー。


為してみれば、随分とあっさりしたものだ。

フローズン・ドラゴンには討伐依頼も、討伐報酬もない。

あるのはただ名誉だけ。


それでも、アイシャにとって特別な称号であることには変わりない。


「お前、ドラゴン・スレイヤーにでもなるつもりか」


ランドウの言葉に応えることが出来たのだから。


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