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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
380/396

イングリット・パーティ

激し過ぎた戦闘。

シャアリィの傷は、まだ完治していない可能性もある。

迷宮を出たら、そのまま治癒院に行こう。

傷の有無に関わらず、上級術式を使って貰えばいい。

シャアリィとアイシャは、そう話し合い、今日の探索を終えることを決めた。

魔力と体力の回復が終わり、二人は厳冬の名残を残す玄室を出る。


そこで鉢合わせ。


「おやぁ、ネームド・キラーじゃない」

「私達も今日は六層なんだ」

「偶然だねぇ」

「魔力ロックが掛かった玄室があったから待ってたんだ」

「なんか、いい獲物はいたかい?」


飄々とした口調だが、そのパーティ・メンバーは皆、困惑を隠せずにいる。


「イングリット・パーティか」

「皆、顔色が優れないようだが何かあったのか?」


アイシャがにやりと笑って、困惑の理由を問い詰める。


「なぁに、大したことじゃあないさ」

「そこにいたマンティコアが少々、手強くて疲れただけ」

「六層ってのは、さすがに一筋縄じゃないかないだろ?」


シャアリィは、じっと、マルシェの顔を見て、その姿を覚える。

成程、グレイの瞳、ボブヘアー、男好きのする肢体。

浅黒い肌と、少し尖った耳・・・あのイザベラとまるで正反対。


「そうか、私達も少々手強いのとやりあったから、疲れてしまってね」

「今日は引き上げる所だよ」

「まぁ、お互い、命は大事にしようじゃないか」


アイシャはそう吐き捨てると、シャアリィに目配せを送る。


「ふうん、手強い奴って?」


マルシェの問いに、アイシャは親指で背後の玄室を指す。


「まだ、骸が転がってるよ」

「興味があるなら、見て行けばいい」

「じゃあ、私達はもう行く、またな」


アイシャは、嘲るような視線でイングリット・パーティの面々を眺めた後、軽く左手を挙げて合図。

それに呼応してシャアリィが歩き出す。

もう、既に疑いの段階ではなく、確定となったマッカーシー・パーティ襲撃犯。

だが、ここで始末するには少しばかり証拠が足りない。

シャアリィも、アイシャも、煮え滾る思いを顔に出さずにいるだけで限界だった。


・・・


「まじか・・・本当に殺りやがった」


その声は、セロニアス崩れの獣人、ゼノビア。

シャアリィとアイシャの戦った玄室に踏み込んだイングリット・パーティがそこに転がる氷結龍の骸を見下ろし、揃って驚嘆の言葉を漏らす。


「姐さん、やっぱり闇討ちする方がいいんじゃないですか?」


タンクの大男、ネルソンが身体に似合わぬ消極的な発言。


「馬鹿か、それじゃあ、どうやって踏破するんだよ」

「泳がせておいて最後に横取り、リーダーの計画以外にないんだよ」


銀枠金十字をぶら下げた治癒師、ネロが計画の全貌を口にする、と、


「しっ、声が高い」

「奴らが傍にいたら聞こえるだろうが」


と、術式使いの女、フェイがそれを咎める。

近接アタッカーの二卵性双生児、アルテーアとアマーリアがそれに同意。


「「やるしかないんだよ」」

「もう、我々は後戻り出来ないんだ」


イングリット・パーティは、教会との約束を破ったのだ。

咎めも受けずこうしていること自体、信じ難い幸運。

勿論、不幸な事故だったという言い訳は出来る、が、枢機卿絡みの依頼なのだから、無事で済むとは思ってはいなかった。


「奴ら次第だけど、ここの踏破を終えたなら南か西へ行こうじゃないか」

「そこでのんびり暮らせばいい」

「その為には金、踏破報酬、踏破年金が必要だ」

「何時までも、こんな馬鹿げた命懸けの仕事していられるか!」


マルシェの言い分は(もっと)もだ。

他に生きられる道があるならば、それを選ぶべき。

だからこそ、マッカーシー・パーティが眩し過ぎた。


何時も上機嫌で迷宮に潜り、酒場で騒ぎ、さも楽し気な人生。

それを横目にすれば、毎日を必死で生き残る自分達がちっぽけに思えた。

殺意なんて大それたものじゃあない。

ただ、痛い目に遭わせてやりたかった。

結果の重大さなんて、どうでも良くて、何も考えていなくて。

それが自らの重荷になるなど、


「考えた所で仕方ない」

「上の空だと、トチるよ?」

「さぁ、竜鱗を剥がせるだけ剥がせ、爪も、牙も」

「肉は血抜きが面倒で嵩張るから、捨てておけ」


マルシェの指示に従い、皆がダガーで素材を抉り取る。

こんな上等な素材を手付かずで放っておくなんて、どれだけ奴らは傲慢なんだ。


マルシェは嫌悪を込めて床に唾を吐いた。


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