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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
377/450

オーバーチュア(序曲)

アイシャは瞬時に地の不利を悟る。

この狭い通路では戦術が限られ、シャアリィの安全が担保出来ない。


「シャアリィ、少し無茶をするよ」

「まずは、最初に見つけた玄室に入って戦場の掃除だ」

「行こう!」


アイシャの手とシャアリィの手が重なり、魔石を放り出したままで手近の玄室の扉をアイシャが蹴破る。

そこにいたのは幽霊(レイス)の群れ。

あまりに数が多く、掃除している暇はない。


「ここは使えない」

「次だ!」


二つ目の玄室の扉を蹴破る。

中にいたのは、マンティコア!

さすがに瞬殺するには手強すぎる。


「ここもダメか」

「次!」


三つ目にして、やっと引き当てたのは、アラクネ単体。

アイシャが囮になり、シャアリィが背後からカース・シャドウ、そして、コラプションを放てば、それで終わり。


フローズン・ドラゴンを迎え入れるように、アイシャが前衛で待ちながら索敵を開始。


「予定通り、こちらに来てる」

「シャアリィ、十カウントキャノン準備」

「合図でチャージを開始して」


と、言い終わった瞬間に、アイシャから指示が飛ぶ。


「チャージ開始!」


もう、何度繰り返してきたか、返事代わりの魔法風が吹き荒れる。

その風は、今までの十カウントなど忘却の彼方。

吹き荒れる魔法風に混じって、チリチリと硬質な氷結音が大きくなる。

アイシャは、シャアリィの射線から退避し、その氷結音が扉の前に来るのを待ち構える。


「五・・・四・・・三・・・二・・・」


氷結龍の赤い瞳と、シャアリィの金色の瞳、視線が交錯する。

壁面は既に氷結し、アイシャはそれを避けるように少しばかり後退。


「一・・・砲撃!」


シャアリィの放ったフローズン・キャノンと氷結龍のブレスは同時。

玄室の中に荒れ狂う厳冬の嵐と殺戮の氷塊!

それは混じり合うことなく、互いの身体に届く・・・はずだった。


「レジスト!?」


思わずシャアリィの口から零れた苦々しい現象。


予想していたことだが、さすがに目の当たりにすれば血の気が引く。

フローズン・ドラゴンは、キャノンの九割以上を中和した。

勿論、シャアリィとアイシャには、氷結耐性があり、最早ブレスはただの寒風。

その身体が氷結することもない。


シャアリィが不敵に嗤う。


「あはっ、私達はついに対等になったわけだ」

「この日、この時を待ち焦がれていたッ!」


玄室に呼び込んだのは正解だった。

この広い空間ならば、アイシャの機動力はフローズン・ドラゴンにとっても脅威。

正三角形を描くように、玄室の中で対峙する二人と一頭。


次なる攻撃の一手は、ドラゴン次第!

白き魔物の選択は、アイスダガーとアイスランスの乱れ撃ち。

だが、シャアリィのジャミングが、それを捻じ伏せる。


アイシャは鵺斬を手に、フローズン・ドラゴン目掛けて駆け抜ける。

定石通りの脚部破壊を目論んで!

そのアイシャの眼前に振り下ろされる竜鱗の太い尾。

致死のダメージを与えるに十分な威力、迂闊に飛び込めば命運は尽きる。


フローズン・ドラゴンは、近接戦闘にも優れているらしい。

続くシャアリィの一手、絶妙な間隔で放つ、ストーン・バレットのディレイ四連撃。

さすがに土石ならば術式も届く、が、バレットでは、小さなダメージしか入らない。


固い竜鱗は、腹部以外の全てを覆い、その弱点と思われる腹部にダメージを与える術式ならば!


「貫け!」


氷結龍の直下から、強襲する土石の槍。

詠唱陣を理解しているのか、フローズン・ドラゴンが、それを事も無げに躱す。

一進も、一退もない。


互いに決め手どころか、ダメージ・ディールさえままならない持久戦。

だが、シャアリィにはエレメンタル・バーストという切り札があり、アイシャにも迅雷残花という超絶の手札が残されている。


それは鬼札が故、簡単に披露するわけにはいかない。

じりじりと神経を焦がすような戦いの最中だが、二人の顔には凶悪な殺意の表情が張り付き、その形相はまさに修羅。


一瞬の隙を見計らって、シャアリィが魔力回復剤を喉に流し込む。

時が止まったかのように睨みあう間に、キャノンで使った魔力なら回復できると見込んだ。


まだ、氷結龍にも、奇襲の一手があることを、シャアリィとアイシャは知らない。


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