表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
376/396

アダージョ(ゆっくりと)

最初の玄室は素通り、三叉路を右、そして左の玄室に入室。

けたたましくなる警報の音。


「大丈夫、このアラートはわざと踏んだから」


アイシャの表情は冷静そのもの、シャアリィは別に怖がってなどいない。

むしろ、その逆。

玄室に乱入してくる四つもの魔物のパーティ。

シャアリィは初めて見る、人間型の魔物。


「こいつらは人であって、人ではない」

「遠慮なしに潰して構わないよ」


それを聞いたシャアリィが、まずは数を減らそうと、


「薙ぎ払え!」


鳩尾(みぞおち)の高さで、エレメンタル・バーストを一閃。

初撃を見舞うこともなく前列の近接型の魔物を焼き尽くす。

直後見えた詠唱陣、当然、ジャミングで阻止。


アイシャは、一瞬の隙を突き、剣先を少し後ろに引いて、横一直線に撫で斬る。

アイシャが折り返す前に、シャアリィがアイス・ブラスト。

残存を丁寧に一突きづつ、きっちりと留めを指すアイシャ。


「さすがに、この連中の魔石は取り出して置こう」

「結構、いい値がつくんだ」


シャアリィは疑問を口にする。


「人であって、人でないってのはどういうこと?」

「見るからに人間の死体なんだけれど」


そういうシャアリィの足元で、さっきまで人であった骸が獣に変わっていく。


「メタモルフォーゼさ」

「人間に化ける獣の魔物、今時、こんなダサいローブや帽子を被った冒険者なんていないでしょ?」

「こいつらの知識は、全然、アップデートされてないから、笑っちゃう」


そう言われれば、随分と古風な恰好だった、と、先ほどのことをシャアリィは思い出す。


・・・


十字路を目の前に、アイシャの脚が止まる。


「ターン・フロアだよ」

「通り方は覚えてる?」


シャアリィは頷き、アイシャが先に床に乗る。

くるりと回っているのに、その瞬間は目には映らない。

だが、アイシャの身体は左向き。


「こっちだね」


と、正解の通路に降り立って、シャアリィも又、回転床に乗る。


「ほんっとに、これ、面倒だよね」


アイシャは苦笑しながら、


「六階層は五階層までとは、まるで別物でしょ」


シャアリィの脳裏に過るのは、あの悪辣な『右耳の迷宮』。

アイシャの耳が敵の移動を捕え、ぴこぴこと動く。


「次の角を左なんだが、そうすると前後から挟み撃ちか」

「この場で待機して、片方を片付けてからのほうがいいね」

「出会い頭は厄介だから、もう少しだけ下がろうか」


この階層、索敵に優れた斥候なしではかなり危うい。

もし、あの時、シャアリィが五層でフローズン・ドラゴンに出会っていなかったなら、このフロアがシャアリィの死に場所になっていたかも知れない。

余計なことを首を振って忘却し、シャアリィは会敵に備える。


「来た!」


アイシャが口にせずともわかる。

その魔物は、タウロス。

二列の隊列はキャノンにとって最高の的。


「砲撃開始三秒前!」


魔法風と共にシャアリィが宣言すれば、アイシャは射線から速やかに退避。


「一・・・砲撃!」


たったの三カウント、しかもウォーター。

普通ならば、たかがウォーター・ショット五発分相当の軽い術式だが、ヘリントスの螺旋杖から放たれる魔力、それにレベルアップしたシャアリィの魔力が相乗する。

その威力はタウロスの群れを飲み込み、壁に叩きつける動く水の障壁だ。

十体のタウロスを悉く行動不能にせしめるだけの暴力!

そして、アイシャの彗星棍が唸りを上げて、行動不能になったタウロスの頭蓋を正確に一撃で破壊。


「よし、正面の三叉路まで出て、もう一つの群れを強襲だ」

「魔石の回収は後回し、いいね?」


アイシャの指示に従い、通路を小走りに移動する。

そこにいたのは三体のバイコーン。


「逃がすな!」


というアイシャの掛け声で、シャアリィはエレメンタル・バーストを選択。

狭い通路に合わせ、器用に杖を左右に揺らせば、射程十メートルの切断光線からは逃げられない。

まるで積み木を崩すように、バイコーンの身体がバラバラになる。


アイシャが再び索敵に入り、獲物の接近がないことを確認。


「私は、バイコーンの先に魔石を回収してくる」

「シャアリィは、その変に転がってるタウロスの奴を頼む」


一見、無駄のない役割分担だったが、二人の距離が僅かに離れた、その時、先ほど通った通路の遥か奥から、身に覚えのある冷気が奔る。


「アイシャ、奴が来た!」

「戻ってきて」


その声に反応したアイシャがシャアリィの元に駆け寄ると、二人の眼前にいるのは、あの赤い瞳の凶獣!


「フローズン・ドラゴン!」


その名を口にしたのが、戦闘の合図だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ