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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
375/395

アレグロ(快速に)

その迷宮地図は、折り目の所々が破れているものの素晴らしい精度で書かれていた。

沢山つけられた様々な目印。

トラップ、休憩可能場所、要注意玄室、徘徊性の魔物のルート。

それは、


『マッカーシー・パーティのたった一つの遺産』


その価値は、当時ならば金貨百枚にもなるものだ。

残念なことに今のアーシアン迷宮には、それを支払って踏破に挑むパーティが少ない。

だが、その少ないパーティの中にこそ復讐すべき相手がいる。


「これと同じものを持っているパーティが犯人だよ」

「この地図を頼りに進むなら、必ず通る場所は幾つかある」

「それに、もう目星はついているんだ」


あとはそいつらを乗せるだけ。


「もう、伝えておこう」

「敵の名前は、マルシェ・イングリット」

「あのイザベラよりもさらに珍しい、ハーフエルフだよ」

「グレイの瞳と髪、変わっていなければボブヘアー」

「男好きのするカラダの双剣使い」


アイシャは、敵の素性をシャアリィに告げ、妖しく笑う。


「厄介なのはサイレント・ムーブ」

「パーティメンバー全員が隠れ蓑を纏う、隠密スキル」

「マルシェのスキル範囲は、それ程広くない」

「いくら隠密スキルとは言え、誰かがドジを踏めば解除される」

「例えば、転倒とか、或いは攻撃態勢に入るとか」


「シャアリィが気まぐれに後ろに向けて、アイス・ブラストを撃てば一巻の終わり」

「まぁ、そうなれば生き残りは難癖付けてくるだろうがね」


アイシャがそこまで考えているならば、既にイングリット・パーティの命運は尽きている。


・・・


「さあ・・・」

「私達の旅の集大成を見せる時だ」


シャアリィとアイシャは手を取って、アーシアンの迷宮に一歩踏み出す。

懐かしくも、まだ、愚かで弱かった最初の冒険の記憶。

小石に躓き、自分の立てた音に寒気を感じ、石畳の冷たさに恐怖した。


まるで二人を出迎えるような、最初の会敵の相手は、


犬人(コボルト)


その群れをアイシャが彗星棍でひと薙ぎにする。

どうやら、ヒトの往来も少なくなり、迷宮は飢えているようだ。

一層目から手荒く、魔物の群れが押し寄せる。

まだまだシャアリィの出番はない。


雑魚の魔石など価値もないと、転がした骸をそのままに、二人の進軍は止まらない。

二層、三層と、進めば、リザードマン、ジャイアント・ビートル、シャドウ・ゴースト、見慣れた連中が勢揃いだ。

四層に入って、やっと敵らしい敵に出会う。


『ファイヤー・ジャイアント』


ジャイアントと言うものの、人間より少し大きい程度。

今度はシャアリィのアイス・ブラストで一撃死。

ツリーマン、ポイズン・フロッグ、クロコダイル、マミー。

中層域とは言うものの、二人にとって脅威ではない。


「シャアリィ、止まって」


五層に下る階段の一つ。

シャアリィには初めてのルートで、アイシャが制止を促した。


アイシャが三節棍で宙を薙ぐと、小さな壁の裂け目から飛び出してくる弩弓の矢。

その位置を把握してから、アイシャはもう一度三節棍で薙ぐ。


「今だ、走れ」


矢が再装填されるまでの僅かな時間、トラップを駆け抜ける。

出来る限り罠を避けるルートを選んでいるが、それでも、一つ、二つは外せない。

否、外すならば、相当の遠回りか、玄室二つを通過することになる。

少しの面倒で事足りるならば、最短距離。


さすがは元マッカーシー・パーティの斥候アイシャ。

六階層までならば、隅々まで知り尽くしている。

このルートを通るのには、もう一つの理由がある。


それはシャアリィが殺された通路の回避。

何とも思っていないかも知れないが、心に刻まれたトラウマは侮れない。


六階層に降りる階段で、アイシャが告げる。


「ここまでとここからは、まるで違う」

「覚悟はいいかな?」


シャアリィはただ、アイシャを信じ、笑顔で頷いた。


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