満ち足りた空間
「今日はね、何の宴会かと言うと・・・」
シャアリィの言葉の続きを黒猫姉妹が言う。
「ご夫妻への感謝サプライズです」
「プレゼントも用意しました」
と、アレックスとオルチェに包みを渡す。
オルチェが包みを開けて最初に取り出したのは、小さめの化粧品棚。
ナッチェが手を挙げて、自分からの贈り物であること伝えた。
「頑丈そうでいい棚だね」
「そうすると、こっちの化粧品は・・・」
エレナが少し恥ずかしそうに手を挙げる。
「切らしそうなものを重点的に買ってくれたんだね」
「助かるよ」
最後に取り出したのは、金細工で宝石の入った見事なネックレス。
「あはは、こんな豪華なネックレス付けていく所がないよ」
「でも、せっかくだ、なるべく付けるようにするよ」
シャアリィもアイシャも満面の笑みで親指を立てる。
アレックスも包みを開けて、
「お?酒か?こりゃあ感じから見てシャアリィ達か?」
シャアリィとアイシャが胸の前で腕を交差させ、はずれと示す。
「じゃあ、エレナだな、そうするとこっちの綺麗なグラスがナッチェ」
「当たりだろ?」
黒猫姉妹が笑顔で、あたりですと答えた。
「おお、こりゃあ、また結構なものをくれたな」
「小さなものから、長いものまで揃いか」
「まだ使える、まだ使えると先延ばしだったから、うれしいね」
アイシャは、
「良い刃物を使うのは、料理でも大切だと思ってね」
「シャアリィと選んだんだ」
「気に入って貰って良かったよ」
ん?
と、視線を向けられたエドワードだが、
「俺、呼ばれた側だから、何にも用意してねえよ?」
「何時も世話になってばかりで悪いな」
「買ってきたケーキで勘弁してくれ」
アレックスも、オルチェも、
「十分さ」「気にするな」
と、声を合わせてエドワードのグラスに酒を注ぐ。
そう言えばと、エドワードがシャアリィの新しい武具に気付く。
「随分と、ごつい武器に換えたな」
「とんでもねえ武器だろ・・・それ」
シャアリィは涼し気な顔で、まぁね、と答え、
「今までのワンドの倍くらいかな、ヘリントスっていう職人さんのオーダーメイドだよ」
長く冒険者をしていれば、一度は聞く名前なのだろう。
「ヘリントス!?超一流の武具職人じゃねえか」
そう言えばアレックスは火炎術式の使い手だ。
「ここだけの話幾らだった?」
事も無げにシャアリィが、言い放つ。
「格安の金貨二百六十枚(二千六百万円相当)だよ」
もう少し足せば、アレックスの店の初期費用と同じ額だけに、アイシャ以外は皆、口をぽかんと開けたまま。
「それで、格安・・・なんだ」
と、ナッチェさえもが驚く始末。
空気を入れ換えるようにアイシャがケーキを配り始める。
「さぁ、早い者勝ち」
「狙いが被ったらじゃんけんだよ」
全て違うケーキが十個。
目つきが本気なのは、ナッチェとシャアリィだけだった。




