ライスワインと墓参り
翌日は、エレナとオルチェに同行し、エドワードの治癒院を訪れた。
想定外の来客にまたしても目尻に涙を溜めるエドワード。
すっとエレナがハンカチを差し出して、
「悪いな」
と、エドワードが受け取る。
どうやら、結構、仲は進展しているらしい。
昼食を取りながらシャアリィとアイシャの土産話を少々。
アイシャが得意気に覚えて間もないブライト・ヒーリングを見せると、
「もう、何されても驚かねえつもりだったが、そりゃ反則だろう」
と、エドワードが両手を挙げて降参する。
アイシャは、
「これできみを危険な戦場に立たせる理由はなくなった」
「エレナをちゃんと幸せにすることが、これからのきみの戦いだね」
と、笑った。
エドワードは、
「もう、迷宮は卒業したよ」
「まさか総合治癒院の院長先生になるとは、思ってもなかったが」
「全て、ザックパーティと二人が叶えてくれたもんだ」
「その責任はずっと背負うよ」
と、エレナを見つめる。
オルチェが昼食の包みを解いて、エドワードに催促する。
「アタシの献身にも少しくらい責任を感じてくれるとうれしいね?」
「どうにも、アタシが損な役回りをしてる気がするんだ」
と、少し意地悪く言った。
シャアリィが、
「エレナをお嫁さんにしたらオルチェは義母みたいなものでしょ?」
「そりゃあエドワードだって、きっと何かしてくれるよ?」
と、笑いを誘う。
エレナは穏やかな笑顔で、
「この素晴らしい輪の中にいられるって、本当に幸せです」
「これからも頑張らなくちゃですね」
相変わらずのやりとりにシャアリィとアイシャは安堵する。
そして、シャアリィがエドワードにだけ聞こえる声で耳打ち。
「安息日の夜、ファイヤー亭ね」
「アレックスとオルチェには内緒だよ」
「面白いことがあるから、是非、来てね」
エドワードは率直に、
「おう、わかった」
と、だけ答えたので周囲の人間には話の内容はわからない。
アイシャだけは伝言を察し、
「それじゃあ、私とシャアリィはザックの所に行ってくるよ」
「おっと、その前に」
持参した包みから、キャラメルをごろごろとテーブルに置き、
「食後に三人で食べてね」
と、言い残してから院長室を後にした。
治癒院の見舞い品売り場で小さな花束を買って、その足で酒屋に。
「上等なライスワインありますか?」
と、シャアリィが尋ねれば、店主は、
「少々お値段は張りますけれど、ございますよ」
と、愛想良く応じる。
「じゃあ、三本程下さい」
「二本は、ファイヤー亭への配達で!」
墓地に着く。
言うまでもなく整えられた墓。
もう、どれ程の花と酒が手向けられたことだろうか。
「ザック、久しぶり」
「いよいよ決戦の日が近づいて来たよ」
「守ってなんてしおらしいことは言わない」
「勝利は実力で掴むからね」
と、シャアリィが言えば、アイシャも、
「今日はライスワインだ」
「最近の私達のお気に入り」
「今は一緒に飲んでやれないが、気長に待っててくれ」
「永遠に生きる人間などいない」
「だが、まだまだ、ずっと先になるぞ?」
分かりきったことだが返事はない。
それでも尚、ヒトは墓標に語り掛ける。
それが弔いというものだ。




