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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
365/395

再会のウィトプラナ

イルオールドからウィトプラナまでの道中は、結局、雨ばかりだった。

中継点を過ぎた辺りで、一度、貨物車が泥濘に嵌り、日程は遅れた。

それでも野盗と遭遇することもなく、終点のウィトプラナに十二日目の夕刻到着する。


幸い宿はすぐに見つかり、満足な食事にもありついた。

さすがに十日以上も馬車に揺られると身体も疲弊する。

久しぶりの柔らかいベッドは、寝心地が良すぎる。

枕の下にダガーを忍ばせると、二人は早々に眠りに落ちた。


・・・


翌日、午前。

すっかり回復した身体で、レリットランス行きのキャラバンに乗り込む。

お決まりのような護衛の紹介。


「今回の護衛を担当する冒険者は二名」

「ライルとレガートだ」

「少数の護衛だが、二人ともクラス2」

「心配はいらないさ」


キャラバンの騎手に紹介された二人は自ら声を発することもなく頭を下げた。

シャアリィは気付く。

あの時の青年だと。


だが、その変わり様は ―――

相当に鍛錬を積み重ねた身体、丁寧に整えられた武具、そして何より眼光。

泣き崩れて弱音を吐いたあの青年とは別人。


相方もまた、クラス2にしては精悍な顔つき。

手に持っているのは、弩弓。

腰に二つの大振りなダガー。

レガートと呼ばれた青年は、アイシャと同じく近距離から中距離のマルチアタッカー。


二両編成の農作物輸送キャラバン。

乗客は商人二名、旅客二名、シャアリィとアイシャ。

レガートは別の車両の方を護衛するらしい。


キャラバンが出発して一時間が経過した頃、ライルがシャアリィに声を掛ける。


「今回は完璧な仕事を提供しますよ」


その言葉で、アイシャも気付く。


「ふふっ、随分と強くなったみたいじゃあないか」

「私達を雇うなら今のうちだぞ?」

「今なら大サービスで、一人金貨二十枚で請け負うよ」


アイシャの悪戯な挨拶を、ライルは微笑んで流す。


「それには及びませんよ」

「甘えは捨てました」

「貴方たち程強くはありませんがね」


シャアリィも賛辞を贈る。


「そうみたいね」

「随分と冒険者らしくなったじゃない」

「まぁ、私達としては何事もなくキャラバンがレリットランスに着けば文句はない」

「仕事になったら、期待しているよ?」


ライルは小さな笑みを浮かべて、


「ええ、任せて下さい」


と、呟くように言った後、沈黙に戻った。


「アイシャ、先に眠っていいよ」

「起きたら交代しよう」


シャアリィは、そう言いながら目の前の護衛にも警戒を解かない。

意趣返しならば、絶好のチャンス。

それを与えて飛びつくかどうかを見極める。


だが、ライルはシャアリィ等眼中にないかのように窓を外を見ていた。

それは周囲への警戒。

自分の仕事は、もう、始まっていると自覚しているのだろう。


――― 彼は折れなかった。


仲間全てを失っても。

これからもっと強くなるだろう、そう予感させるものがある。

その掌をよく見れば、左の中指の先が欠損。

恐らくは修羅場も潜ってきたのだろう。


これで良かったのだろうか。

もっとマシな人生があったのではなかろうか。

だが、それは他人が口を挟めることではない。


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