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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
363/396

誓います

その後は、大きなトラブルもなく、五千個の魔石を積み上げることに成功した二人は、アイシャの術式獲得のために冒険者ギルドの倉庫に向かう。

必要な魔石の数は予想通りの千九百二十二個、二回目には二千五百三十五個。

合計四千四百五十七個を消費した。


獲得した術式は、


『迅雷残花』と『起死回生』


迅雷残花は、五連撃の刀剣スキル。

初撃を八十とし、二撃目は百六十、三撃目は三百二十、四撃目は六百四十、最後の一撃には千二百八十。

攻撃が当たる程に威力を増す。

全弾命中ならば、その威力は通常の斬撃の約二十五倍にも至る爆発的な破壊力。

但し、消費魔力も桁外れ。

再使用時間こそ短いものの、魔力が足りなければ体力を浸食する。


起死回生は、残りの体力が少しでもあれば、瞬間全回復というイカサマ染みた超回復スキル。

魔力さえ必要ないが、さすがに連続使用は出来ない。

再使用に必要な時間は十二時間。


アイシャ自身、信じられない程の超絶術式。

最早、フローズン・ドラゴン戦に憂いなどない。


「私のコラプションもイカサマスキルだけど、アイシャの起死回生も同類だね」

「すべての準備は完了した」

「レリットランスに一度帰ろう」


余った風雷魔石をギルド・カウンターで精算する。


「・・・全部精算ですか?」


あれ程、買い取りを希望していた受付嬢も、五百もの魔石を前にすれば嫌な顔。


「ただいま業務が詰まっております」

「預かり証書を発行しますので、精算は明日で」


と、検品を先送りにし、溜息をついた。


・・・


連日のように通った『黒猫のテラス』の姉妹店とも、明日でお別れ。

せっかく顔馴染みになったのに、寂しい限り。


「今日は、パフェ食べちゃうぞ!」


と、シャアリィがオーダーを決めると、アイシャはお嬢様っぽく、


「私は、普通の紅茶でいい」

「それとフォンダン・ショコラを」


ちょっと澄ましてオーダーを終える。

シャアリィの前に運ばれてきたパフェは、夏の果実がてんこ盛り。

大正義、生クリームにカスタードクリーム、チョコレートソースにミントの葉。

思わずアイシャも見入ってしまう。


「ふふっ、しっぽがそわそわしてるよ?」

「スプーン、もう一つもらおうね」


そう言ってテーブルの真ん中にシャアリィがパフェを置くと、アイシャも運ばれてきたフォンダン・ショコラを並べる。


「結局、こうなるのか」

「勿論、こうなるんだよ」


と、何時ものように仲良くシェア。


今日まで何度も何度も繰り返した途方もなく長いルーティンワークの数々。

それも、この甘味があれば報われる。


南部大周回の旅で得たものは、沢山の経験と沢山の思い出。

そして、もう、迂回するまでもないという自信。


『全部終わったら』


と、いう言葉だけは、互いに言わないようにこれからのことを語り合う。

エドワードとエレナの結婚式、ナッチェの初恋、ファイヤー亭二号店。

いろいろな妄想を膨らませる。


お茶がアルコールになって、甘味の全てがテーブルから消える。

楽しい時間はあっという間に過ぎて、初夏の夕暮れはまだ涼しい。


シャアリィが露店の宝石店で、小指用の指輪を見つけた。

それはまるで玩具のように小さな、既製品。

それでも記念にと、お揃いのものを買って、互いに交換して指に嵌める。


「汝、病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も」

「生涯、愛し、敬い・・・なんだっけ?」


と、シャアリィが少し巫山戯ながら口にすれば、アイシャは、


「誓います」


と、呟く。

シャアリィは満面の笑顔で、


「やったぁ!」


と、はしゃいでアイシャの髪を撫でた。



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