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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
358/396

四霊玉石

グリフォンの魔石をテーブルに置き、クサカベが手を伸ばすのは『廃棄の王』の魔石。

同じように両手の二つの指先を使い、魔石を灯りに翳す。


「・・・これは魔石ではありませんな」

「が、術式は入っております」

「しかし、もう、少々、お時間を下さい」

「あまりの禍々しさに目が潰れそうになる」


鑑定を妨害する呪いでも掛かっているのだろうか。

あの『廃棄の王』の魔石だけにそれは十分に考えられる。

しかし、魔石でない・・・


アイシャが思い当たることを口にする。


「魔人、という存在をご存じですか?」


その、たった一言にクサカベとミヤマが驚愕する。

アイシャがこの場でそれを口にしたのなら、今、クサカベが鑑定しているのは魔人の魔石・・・つまり、魔核。


「まさか・・・魔人を討伐した、と?」


シャアリィは少し場都合が悪そうに、正直に答える。


「はい・・・名有り『廃棄の王』は、魔人でした」

「西方の枢機卿の計らいで、討伐を依頼され、その報酬として得たものです」

「他の教会の人間も、冒険者ギルドさえも、それがここにあることを知りません」

「記録上では、その魔石は破壊されたことになっています、ので」


アイシャがそれに補足する。


「つまり、この魔石の存在を知っているのは」

「西方大教会枢機卿クリムゾン・アレクサンドル」

「同じく大司教ジョルジアット・フランシスコ」

「そして我々二人と、棟梁とクサカベさん」

「勿論、ミヤマを巻き込むつもりはありませんので、早々に魔石を使用します」

「あとは、この魔石、否、魔核のことは忘却して頂ければ、と」


クサカベが呵々と笑う。


「先代も随分、お二人の破天荒っぷりには驚かされたものでしたな」

「亜竜を七つも単独行で仕留めたり、百年を生きた名有りの石も拝見しましたな」

「先代も、もう少しだけ長生きすれば、この奇妙で禍々しくも、生命力に満ちた逸品を拝むことが出来たのに、勿体ない」


ミヤマは瞠目したまま、


「先代が目を掛けるのも当然、ですね」

「私も贔屓にしてもらえるように精進せねばなりません」


・・・


二十分程、クサカベは魔核と睨みあい、ついに匙を投げた。


「二つまで絞り込めましたが、最後までは至りませぬ」

「ですが、共に強力な攻撃術式」

四重礫(エレメンタル・ブラスト)か、四重剣(エレメンタル・バースト)

「その威力は単色の礫や剣の三倍から四倍相当」

「術式の階級で言えば上級以上、特級未満・・・最上級」

「恐るべき強敵だったことでしょう」


シャアリィが歯噛みする。


「大司教がいなければ、私は片腕を失っていました」

「四属性全ての上級術式を短縮詠唱する、本物の魔人」

「留めを刺したのはアイシャです」


リバース・ボディの術式については触れず、シャアリィは事実を述べた。

アイシャの合図でシャアリィが目を閉じて『廃棄の王』の魔核を額に当てる。


「術式解放」


その様を見ていたミヤマが、思わず後退る。

シャアリィの目がゆっくりと開き、獲得した術式の名を告げる。


『エレメンタル・バースト』


「確かに獲得しました」


続いてアイシャも又、目を閉じてグリフォンの魔石を額に当てる。


「術式解放」『ブライト・ヒーリング』

「獲得しました」


躊躇(ためら)いもなく、聖金貨にも替えられる魔石を続けての解放。

その潔さにクサカベは、


「冥途の土産を貰えましたな」

「こんな面白い話を棟梁としか語り合えないことが残念至極」

「しかし、何処まで強くなったとて、ひとはひと」

「アイシャ殿、シャアリィ殿、戦いだけが人生ではありませぬ」

「やり抜いた暁には、此処で刀剣を打つという選択肢もありますとも」


またしても呵々と笑って、楽しそうに席を立つ。

シャアリィがその背中を追うように立ち上がり、


「これをどうぞ」


と、小さな箱を手渡した。

その中にはチョコレートと金貨が一枚。


「棟梁様、この程度の心付け、お見逃し下さいますね?」


と、シャアリィが問えば、


「私は今日、ここで何も見ていないし、何も聞いていない」

「心付け?果て、なんのことやら、わかりませんが、お客人」


と、にやりと笑う。

シャアリィはテーブルにもう一つ、小さな箱を置き、


「アイシャが先代と一緒に食べたかったものが入っています」

「私達にとっての幸せの象徴、是非、お愉しみ下さい」


ミヤマも小箱を片手に席を立ち、一言零して屋敷の奥に消える。


「粋だね」


アイシャは、満足そうにそれを見送った。


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