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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
356/396

迷宮四層

イルオールド迷宮四層。

最初の玄室に現れたのは、アイシャの大嫌いなバンシィ。

しかし、以前のような体たらくには程遠い、アイシャの猛攻。

耳を塞ぎたくなるような醜悪な叫びに顔を顰めながらも、その攻撃は緩まない。

逃げ惑うバンシィをシャアリィが涼しい顔で撃ち落とす。


次の玄室に登場したのは、迷宮内部では非常に珍しい相手。


「グリフォン」


神獣にも近い魔物だけに、油断すれば大怪我では済まない。

だが、飛び回るには迷宮は狭すぎる。

最大の脅威である高速飛行からの急降下攻撃が封じられているならば、シャアリィの敵ではない。

前衛にアイシャが立ち、ウインド・ブラストで動きを抑えたならば、あとは不可避の地の槍で直下から貫くだけ。

血に塗れながらも、鋭い爪で反撃するグリフォンの生命力は賞賛に値する。

さすがにシャアリィは近寄れず、アイシャが鵺斬を抜刀し、仕留める。


「フィールドであったら、ダメなやつだ、コレ」


魔石回収のためにグリフォンの胸を抉るシャアリィの言う通り。

アイシャもそれには同意する。


「動きを封じられ、単体でこの強さだからね」

「フィールドで群れに遭遇したら、私達だって危ないよ」


シャアリィはグリフォンの魔石を見て、感じる。


「これ、術式入ってるかも?」

「他の魔石と混ざらないようにしとこ」


・・・


シルフィード・ウルフや、ボレアス・ラビット。

風属性の魔物は多くの場合、動きが素早い。

それは術式使いにとって大きな脅威だが、優れた動体視力を持ち短縮詠唱を使うシャアリィにとっては、それ程の脅威ではない。

だが、魔力効率という点では、各個撃破になりがちな為、少々、厄介だ。


「あれなに?」


と、シャアリィが指差したのは、金貨、銀貨の塊。

アイシャも遭遇するのは初めてだが、噂では何度も聞いている。


「『クリーピング・コイン』だね」

「あの中の一枚が本体で、残りは全部、本物の金貨、銀貨」

「お金って怨念が溜まりやすいんだって、マーシーが言ってた」


倒す方法は簡単。

本体を攻撃するだけでいい。

しかも、その本体は攻撃力も大したことはなく、防御力も低い。

但し、周囲の貨幣に潜って身を守るので、なかなか倒せない。

失敗すれば、その分、実入りが減る。

人間の欲をついた面白い生態の魔物。


「そりゃっ」


と、アイシャがコインの山を蹴飛ばして崩すと、物理法則に逆らった動きをする一枚のコインが見つかった。


「てぃっ」


それを器用に鵺斬の先端で貫くと、割れたコインの中から、指の爪の半分程の魔石が転がり落ちた。


「これで、残りは本物の金貨、銀貨だ」

「でも、要注意なのはここから」

「喜んで金貨を拾い集めてると、他の魔物が接近するのを見落としてしまうこともあるよ?」

「迷宮っていうのは、本当に厭らしいことをするよね」


と、言いながらも、アイシャは革袋の中にひょいひょいと金貨、銀貨を摘まみ上げて放り込む。

シャアリィは周囲を警戒しつつ、時折、アイシャの手先にあるコインを興味深く眺める。


「中にまだ魔物が混じってるかもよ?」


と、アイシャに冗談を言えば、アイシャは笑いながら、


「さすがにこうやって一枚づつ摘まめばわかるよ」


成程、と。

掌で搔き集めない意味をシャアリィは理解した。


その後も順調に四階層を廻り、今日も全ての玄室を攻略した。

昨日の収穫と合わせ、既に魔石は千七百以上。


四層にグリフォンが出現したことを考えると、最下層は相当の魔物がいることになる。

アイシャは一考し、


「一層の魔物のポップを待とう」

「七層は、さすがに乱獲向きとは思わない」

「あと二日も待てば、ほぼ元通りに回復するさ」

「その間に、クサカベさんに会えばいいかもね」


臨機応変であれば、常に予定変更はつきもの。

シャアリィはアイシャに従う。


「あれ、何が入ってるかな」

「グリフォンのもあるし」

「楽しみだね」


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