乱獲
真新しいランドウの墓に祈りを捧げ、好きだったライスワインと百合の花を手向ける。
そこに埋まっているのは荼毘に付され灰となったランドウの亡骸。
東方の国では国土が狭く衛生環境に配慮した火葬が主流とのことだ。
炎にやかれ煙となり成仏すると地元の宗教では説いている。
この広大なアーシアン連合の中で、恐らく唯一、火葬を行うミヤマ。
それは炎なくして生きられない刀剣の一族に相応しい葬送なのかも知れない。
「先生、行って参ります」
「ドラゴン・スレイヤーの名をミヤマに必ず捧げます」
「常世に行く時には土産話を聞かせましょう」
アイシャがそう言葉にすると、シャアリィもランドウに、
「そう簡単にはアイシャを手放すつもりはありません」
「それにアイシャがそちらに行く時には、私もいますよ」
「その日が来たら、叶わなかった酒盛りをしましょう」
掌を合わせる東方の島国の祈り方で別れを告げた。
「客人よ、もう、行かれるのですか?」
「もっと、ゆっくり先代を偲ばれる時間を取っても良いのですよ」
テッシュウ・ミヤマが、名残惜しそうに二人を見送る。
「目的を果たした後、もう一度顔を出します」
「クサカベさんにお尋ねしたいこともありますので」
アイシャの用件は、例の魔石の鑑定だろう。
ミヤマの屋敷以外では、『廃棄の王』の魔石の鑑定など依頼出来ない。
「承りました」
「クサカベにも頼んでおきましょう」
「では、ご武運を」
背中を見送るミヤマの気配が失せ、扉が閉ざされる。
この屋敷も又、一つの聖域。
御用の無い者通しゃせぬ。
大噴水の公園広場、そこから伸びる東への道。
その門を越えて十分程歩けば、イルオールド迷宮の入り口だ。
すれ違う者の顔色は、明暗。
初心者殺しの『三色迷宮』。
「シャアリィ、例によって私が先行だ」
「マップを見る限り罠は皆無だが、初見の迷宮、慎重に行こう」
アイシャの言葉に頷いて、シャアリィが了解を示す。
それほど広くはないと言っても、レリットランスよりは広い。
入り口からして五人並んで歩ける程の通路。
その遥か遠くから風の唸りが聞こえる。
風とは何か?
それは空気の動き。
雷とは何か?
それは大気の摩擦によって生まれるエネルギー。
強い風がある場所には、強い雷が生まれる。
入り口から数十歩も進めば、濃密な風の精霊の領域。
それを纏って最初に現れたのは、ウインド・マンティス。
昆虫類、大型カマキリだ。
動きは素早く、術式攻撃も使う。
普通ならば中層域に出現するような強力な魔物。
術式使いを前にしても、アイシャはフォーメーション変更を指示しない。
会敵直後に放たれる「エア・スラッシュ」。
しかし、術式は彗星棍によって破壊され、その勢いのまま、頭部を砕かれるウィンド・マンティス。
風の術式をさらに強力な風で粉砕するアイシャの絶技。
後続が来ないことを確認した上で、アイシャが自らのダガーでマンティスの腹を抉る。
一分足らずで最初の獲物を仕留めても、動じることもなく歩を進める。
二度目の会敵は、ボルト・アーマーの軍勢。
帯電した槍を使う幽霊騎士。
一体ならばマンティスと大差ないが、十五体を越える群れでは分が悪い。
「シャアリィ、頼む」
その声の返事代わりに放たれるアイス・ブラスト。
シャアリィのアイス・ブラストは以前のような対空防御用の術式ではない。
その一粒一粒に螺旋杖のエネルギーが乗った氷の散弾銃だ。
二列目まで、つまりは十体を破壊する程の威力を持つ。
そこに叩き込まれるのが、レベルアップで四連装に底上げされたストーン・バレット。
「残っちゃった」と、舌を出して笑う程の余裕。
アイシャが残存を彗星棍でぶち壊す。
反撃の機会さえ与えない瞬殺劇。
「ファントムは手応えが薄いから気持ち悪いんだ」
と、嘆きつつも魔石を回収するアイシャ。
後続が入ってこないことを幸いとばかりに、一階層の敵を殲滅し尽くす。




