表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
346/399

実力以上のナニカ

外見上はすっかり傷の癒えたアイシャだが、痛みの残る顔面にフェニトへの怒りが沸々と湧いてくる。

こんな面倒事に巻き込まれたのだから、文句の一つも言いたい所。

だが、フェニトはそれどころではない。

アイシャの頭突き地獄を味わって、失神、失禁。

面目どころの話ではなく、白毛に対する恐怖が刻み込まれてしまったようだ。


試合を見ていたメラクも又、宗家の恐ろしさを実感していた。

力量で言えば負けるはずのない相手。

それも、マウントポジションまで奪っておいて尚、ひっくり返った結末。

この戦場無き世界では、殺戮機械と謳われるセロニアスも錆びつくのだろうか。


そう答えはそこにある。

どんなに木偶を上手に殴れた所で、生死を掛けた戦いをしてきた者には及ばない。

一瞬毎に揺らぐ死線を越える為には、実力以上のナニカが必要なのだ。


それを人は運、精神力、気合などという不確かな言葉でしか説明出来ない。

アイシャは確かにフランコとの手合わせでは負けた。

だが、もしも、命を懸けた戦いであったなら、その結末は違っただろう。


「アイシャ、すんごい顔になってたよ・・・」

「私泣いちゃいそうだったもん」


と、シャアリィに言われれば、悪かったねとしか言えない。

言い訳するようにアイシャが答える。


「私がフェニトに勝つには、相手の油断を誘うしかなかったんだ」

「シャアリィにも覚えがあるでしょう?」

「勝ちを確信した時の一瞬の緩み」


それはシャアリィの心に、今尚、刻まれている最悪の出来事。


「ゼロ距離に持ち込めば、あとは精神力の勝負」

「それなら勝てる、と、思った」

「結構、ヤバかったんだけどね」


シャアリィは思わず、


「無茶し過ぎでしょ・・・勝てって言ったのは私だけどさ」

「正直、本当に勝っちゃうとか凄すぎない?」


アイシャは、平然と答える。


「ん-、実はね」

「勝ち負けとかあんまり考えてなかった」

「ただ、ぶっ殺すって思ってた」


頷きながらシャアリィも同意する。


「だよね・・・本当に殺すかと思ったもん」

「十五回だよ?頭突き」

「一回だけでも泣きそうなやつを十五回」

「あれ、相手がセロニアスじゃなかったら、死んでるでしょ?」


冷静になるとアイシャも少し血の気が引く。


「うん・・・でも」

「反省はしてるけど、後悔はしてない、みたいな?」

「だって、何から何までムカつくじゃない?」


それもそうだ、でしょう?


と、二人は顔を見合わせて無邪気に笑う。

少し時間を置いて、セレンがアイシャに声を掛けた。


「さすがというか、天晴というか、我が妹ながら寒気がするよ」

「実に見事な宗家の戦いだっと棟梁には伝える」

「まぁ、兄上がいたら小言のひとつも言われただろうが、私は大満足だ」

「レヴン達もスカっとしたと言ってたな」


アイシャは少しむくれて、それだけですか?と、セレンに問えば、


「否、成り行きとは言え、済まなかった」

「今後は気を付けるよ」

「里の皆も、分家の若衆頭がアイシャにやられたと知ったら見方も変わる」

「旅を続けるなら、せめて健やかでいてくれ」

「兄からの頼みだ」


シャアリィは、少し安心した。

もしも、セロニアスでなく普通の家柄だったなら、ただ仲の良い兄弟姉妹なのだろうな、と。


「これ以上、面倒な事に巻き込まれないうちに、ミヤマ先生の所に顔を出します」

「兄さま達も、健やかでいてくださいね」


ゆらゆら揺れるしっぽの先だけは、少し捩じれている。

きっと、まだ、傷が痛むのだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ