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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
342/399

分家

珈琲を飲み終わり、まだ、雨が降り続く中、シャアリィとアイシャは防水布も用意せず店を出た。

そして宿屋の看板を見つけると滑り込むように扉を開ける。


「空いている部屋はありますか?」

「出来れば、ツインかダブルで」


幸いにして部屋の空きはあり、前金で二人分の銀貨十六枚を支払う。

濡れた髪の水気をタオルに吸わせ、人心地着く。

シャアリィが気にしていることをアイシャが先んじて口にする。


「彼らは分家のセロニアスだよ」

「私の父は宗家の棟梁」

「宗家の血を引く者は白毛」

「生まれつきの身分制度故に、私のような白毛の不出来者は嘲笑の的なんだ」

「師父というのは、分家の棟梁のこと」

「全てを棟梁と呼ぶと紛らわしいからね」

「赤い方がメラク、黒い方はフェニト」

「私の兄達を除けば、最強クラスのセロニアス・・・」


シャアリィは気分を変えるべく、アイシャに囁く。


「私はアイシャの白い髪が好きだな」

「それにね、もしかしたらアイシャの方が強いかもよ?」

「武具の有り無し関係なく戦ったなら、きっと」


アイシャは自嘲混じりに零す。


「並みの剣ならば手刀で叩き折る連中相手じゃ、無理だよ」

「セロニアスが特定の権力者だけに肩入れしないのは、そういうことなんだ」

「アンナではないが、セロニアスという存在は領土間の力関係をひっくり返してしまう」

「教会から封印指定される前に、自ら閉ざして身を守っている一族」


大きな溜息をついた後、アイシャは作り笑いを浮かべて、


「少しくらい揶揄されたからって、どうということはない」

「私はこうしてシャアリィと自由に旅が出来るし、選択肢は自分次第」

「師父やら棟梁やらに縛られることもないんだ」

「この自由に比べたら、武芸の伝承と、血の継承だけに生きる気にはなれないよ」

「不出来でむしろ良かったとさえ、思ってる」


シャアリィはその言葉で自分の中の苛立ちを抑えた。

自分よりもアイシャの方が絶対に悔しいだろうに。

その本人がどうでもいいと言うのならば、それ以上言葉にするべきじゃない。


「しっぽ、拭いてあげるね」

「はい、こっちに頂戴?」


するりとアイシャのしっぽがシャアリィの膝の上に乗る。

その先っぽだけがちょっと不機嫌そうに動いていて可愛らしい。


「ふふふ、ちょっとは嫌なんだ?」

「わかりやすいね」


アイシャは頬を膨らまして、明後日の方向を向きながら、


「ひとりじゃないって、うれしいね」


と、小さな弱音を吐いた。


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