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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
341/412

セロニアス

フェザーエリスに到着。

何時もならば冒険者ギルドに向かうのだが、この街の迷宮で狩りをするつもりはない。

迷宮の情報収集をする必要もなければ、一週間程度の滞在費用も懐にある。

エンダーベルトで稼いだ金貨は既に口座に入金済み。

大きな買い物をしないならば、商業ギルドにさえ立ち寄る必要もない。


「ん-、やっぱ地面はあったほうがいいねぇ」


と、シャアリィが大きく背伸びをすれば、アイシャも同感だとばかりに、


「慣れたといっても、やっぱり食欲も下がるし」

「おや・・・雲行きが怪しいね」


伸びをするついでに空を見上げたアイシャが、雨の到来を予告した。


「早めに雨を凌げる所を見つけよう」


二人は小走りに桟橋を移動し、最初に目についたカフェテリアに入る。

それとほぼ同時、雨が降り始めた。


「気付いて良かった」

「濡れなくて済んだね」


窓際の席からは、港が一望出来る。


「少し気温が下がりそうだから、カフェインを取ろう」

「私はコーヒーとチーズ・タルト」


珍しくアイシャが先にオーダーし、シャアリィもそれに乗っかる。


「私も同じものでー」


雨雲が空一面に広がって、雨は止む気配を見せない。

シャアリィはご機嫌で、チーズ・タルトを頬張る。


「ここって修行の名所だって聞いたけれど、セロニアスの人たちも来るのかな?」


そう問われたアイシャは、嫌な予感を感じ取る。


「ああ、イルオールドにも近いし、セロニアスの連中はこの街を気に入ってる」

「特に無手の連中・・・つまりは『本物』のセロニアスだね」

「滅多なことでは里の外には出ないが、ここは別だよ」

「修行の成果を測るには、セロニアスの中だけでは足りない」

「だから、ここの闘技場で武闘大会に出場することもあるんだ」


アイシャの表情からは苦々しさが滲み出ている。


「私の四人の兄たちは、大会優勝候補の常連」

「宗家の跡取りの資格とまで言われている大会」

「素手による試合だけに、私はまったく勝ち目がない」

「出来れば会いたくないな」


一人っ子のシャアリィには分からない。


「それなら、一週間も滞在せずに、すぐにイルオールドに行こうよ」

「私もここじゃあ役立たずなんだし」


そうしようか、と、口に出そうとした瞬間、アイシャの背中から声を掛けられる。


「よう、アイシャ」

「元気にしてたか」

「不出来者は自由でいいよな」

「俺達は師父の言いつけで、次の武闘会で勝たにゃならん」

「面倒ったらないぜ」


アイシャが簡単に背中を許してしまうような相手。

その男達の頭にはアイシャと同じような耳があり、尻尾もある。

セロニアス・・・だが、その毛色は黒毛と赤毛。


「相変わらず鈍いな」

「そんなんでよくも名有りを倒せたもんだ」

「どうせ、相方の手柄なんだろう?」


同族への無分別な物言いにシャアリィが立ち上がろうとした瞬間、

アイシャがそれを制止する。


「いいんだ、シャアリィ」

「言わせておけばいい」


テーブルの下で固く握り閉めたアイシャの拳が震えていた。


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