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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
340/395

観光ガイド:東の港街

大型帆船に揺られて二週間。

もう、すっかり船の旅にも慣れた二人は、甲板のロッキングチェアでまったり。

船が停止する食事時まで、交代で惰眠を貪る。

そういう時に欠かせないのが、本。


エンダーベルトを離れる際に市場で数冊の本を買って持ち込んだ。

料理のレシピ、カクテルのハンドブック、アーシアン連合国の歴史書など。

知ろうと思わなければ知ることが出来ない知識。

実際に経験する前の基礎的な情報、他人の経験から学べるアイテム。

文字、そして本は、時間をも超える究極の知の奥義。


シャアリィが眠る横でアイシャが今、読んでいるのはスキルガイドだ。

スキルを習得する簡単な方法は、術式が封印されている魔石の封印解除。

それならばピンポイントで狙った術式を得ることが出来る。

だからこそ、その価格は非常に高価。


次に簡単な方法と言えば属性魔石を集めての習得。

属性だけは限定出来るが、どんなスキルを習得するのかは不明。

それまでの経験や取得者の性質、願望、いろいろな要素が絡んでいると言われている。


簡単でない方法。

それはアイシャやイザベラのように修行、鍛錬、練習によって獲得するスキル。

アイシャの居合斬もスキルの一つに分類される。

気配遮断や歩法術、呼吸術、広く考えれば武芸の技は基本的な部分からスキルだ。


例えば、弓を打って的に当てる。

それを正確に再現するためには、相当の鍛錬、練習が必要になる。

剣を握って的を両断するのも、鈍器を急所に命中させるのも、当然、素人には難しい。


フェザーエリスという街は、そういう修行の場として有名だ。

近郊の迷宮も又、それを後押ししている。


『エリス迷宮』の魔物は、総じて魔法耐性が高く、強い部類になれば八割もの減衰を覚悟しなければならない。

特に影響を受けるのは火炎の術式。

質量戦最弱の術式故に、上級術式のインフェルノやエクスプロージョンでさえも、ほぼ、無効化される。

最も減衰の少ない土石術式でも、五割の威力減衰は覚悟しなければならない。


それは即ち、群れと遭遇したならば、予想以上の痛手を受けるという意味だ。

故にこの迷宮では、治癒師が大きな役割を果たす。


シャアリィとアイシャにしてみれば、わざわざ不利な迷宮に挑む理由もなく、のんびりと過ごせれば良いのだから、『エリス迷宮』に足を踏み入れることはないだろう。

とは、言うものの、折角、訪れるのだから一週間くらいは滞在するつもりだ。


「んんん、ふわぁあ、アイシャ、そろそろ代わろうか?」


シャアリィが目を覚まし、半ば本を読み飽きたアイシャが、


「うん、そうさせてもらうね」


と、読んでいた本をシャアリィに渡す。

シャアリィはそれを脇に置いて、別の本を読み始める。


「今度は何を作ろうかなー」


今、二人のトレンドは、旧世界の料理レシピだ。


「やきにく?」

「ステーキの小さいやつじゃん」

「まぁ、予め切っておけば食べやすいし、野菜も一緒に焼けば美味しいかも」

「でも、それってバーベキューじゃん?」

「やきにくって何?」

「どうすれば、やきにくなの?」

「外でやればバーベキューで、屋内ならやきにくなの?」


すっかり、料理の沼に嵌っているシャアリィだった。


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